東洋医学を正しく知って不調改善

がん治療における東洋医学の役割は? 再発対策としても注目

(C)日刊ゲンダイ

 東洋医学ではがんを含む全ての病気の発症は、「邪気」と「正気」が戦い、正気が負けたためだと捉えています。邪気は、各病気の原因や悪化因子、正気は、健康を維持し病気から体を守る免疫力などを指します。

 現在、西洋医学のがんに対する治療は、手術・抗がん剤などの化学的療法・放射線療法の3本柱であり、がん組織の除去やがん細胞の消滅を目的としています。それらの治療は、がんという邪気を追い払うことに強く威力を発揮すると同時に、体の正気にもダメージを与えてしまい、患者さんはがん治療の副作用によって心身ともに苦痛を強いられることが多々あります。

 そんな西洋医学療法の副作用の緩和や、さらにはがんの再発対策として東洋医学はいま大いに注目されています。

 がん治療専門病院の中には漢方外来を設け、さまざまな漢方薬の処方を行っているところも増えてきています。

王瑞霞氏
王瑞霞氏(提供写真)

 例えば漢方薬の「大建中湯」という処方薬は、外科や婦人科の開腹術後で腸の働きが悪い場合や、放射線治療による放射線腸炎、鎮痛剤のモルヒネの副作用による便秘などの改善に使われています。また、抗がん剤による倦怠感、無力感、食欲不振、食べても味がしない、吐き気などには「六君子湯」、免疫力の維持およびがんの再発予防には「補中益気湯」や「十全大補湯」などといった漢方薬が処方されています。

 鍼灸治療も、抗がん剤治療に伴う肢体の痛みやしびれ、がん治療全般に広く応用されています。

 また、最近の研究報告では、昔から滋養強壮、抗病力を高めることができるとされているツボの「足三里」は、免疫を担う白血球の活動を活発化させることが電子顕微鏡で観察され、「三陰交」は抗がん剤による赤血球や白血球の減少に効果が見られるそうです。いまや、がんに対する上記のいわゆる標準治療に東洋医学を加えることは、決して珍しくありません。西洋医学の負の部分をカバーし、がん患者さんの生活の質(QOL)および生存率の向上に大きく貢献すると考えられるようになっています。

王瑞霞

王瑞霞

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。中国山東中医薬大学卒業。中国北京中医薬大学大学院修了。日本大学医学部医学博士。鍼灸師、登録販売士。

関連記事