科学が証明!ストレス解消法

客観視が伸びしろになる 能力が低い人ほど自分を過大評価

自分を過大評価するのはNG(C)imtmphoto/iStock
自分を過大評価するのはNG(C)imtmphoto/iStock

「この仕事やっておいて」「だからダメなんだよ」など、上から目線でコミュニケーションを取る人がいます。そんな一言を受けた側はイライラが募るかもしれませんが、いちいち敏感になる必要はありません。

 面白いことに、「能力が低い人ほど自分を過大評価する」という米コーネル大学の実験結果(1999年)があります。ダメな人が、自分をダメだと認識できないと科学は証明しているのです。

 実験では、ユーモア、文法、論理のテストを行いました。

 たとえば、ユーモアでは、被験者である65人の大学生に30個のジョークを読ませ、どれくらい面白かったか評価してもらうという具合です。点数の付け方で、自分のユーモアセンスの高さをはからせた格好です。

 その上で、「あなたのユーモアの理解度は同年代の中でどのくらいに位置していると思いますか」と尋ね、回答してもらったところ、ユーモア理解度の順位の低い人ほど、「自分はユーモアセンスがある」と自己評価の高い傾向がありました。

 成績下位25%以内の人は、総じて「上位40%程度にいる」と自分を過大評価し、逆に成績上位25%以内の人は、平均して「上位30%程度にいる」と過小評価したといいます。皮肉にも、謙虚な気持ちがない人ほど能力も……ということを示唆してしまったのです。

 この実験を行った研究者の名前を取って、実際には能力の低い人が自分の容姿や言動について過大に評価する認知バイアスを「ダニング=クルーガー効果」と呼んでいます。

 裏を返せば、自分に自信がないのは、それだけ自分自身を客観視できている証拠なのです。

「あなたが無能なら、あなたは自分が無能であることを知ることはできない。正しい答えを生み出すために必要なスキルは、正解が何であるかを認識するために必要なスキルと同じである」とはダニングとクルーガーの弁です。自分を過小評価しろとは言いませんが、謙虚な気持ちは、結果的に自分自身の状態を客観的に判断するメタ認知につながります。

 自分のマイナス面を受け入れることは◎。むしろ、自分の思考や行動を客観的に把握し、認識するメタ認知ができない人ほど、うぬぼれてしまい、上から目線だったり、自身を過大評価して、成長の機会を失わせているのです。

 実際、「あなたは平均よりも運転がうまい方ですか?」というアンケートに対して、実に70%が「私は平均以上です」と回答していることからも、そもそも「自分は大丈夫」「他人は自分より下」と決めつけて考えている人が多いと考えられます。

 何事もそうですが、「自分はまだまだの身だ」と考えている人の方が伸びしろがある。

 たとえば、輝いている人を見ると、「〇〇さんみたいに気さくに話せない」「△△さんみたいにアクティブじゃない」と自信を失いそうになりますが、考え方を変えてみてください。「私は自己評価ができている」という認識。その客観視が、あなたの伸びしろになりますよ。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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