時間栄養学と旬の食材

【葛】伝統的な植物の「花」に潜む意外な栄養素 骨密度の低下を抑制

葛餅
葛餅

 葛(くず)は古くから食品や生薬として利用されてきた日本の伝統的な植物です。風邪をひいた時の「葛湯」や、葛の根を乾燥させて煎じた「葛根湯」などで耳にしたことがある方も多いでしょう。他にも、切り傷の回復や糖尿病の改善に葛の青葉を搾った汁や、養毛効果に良いとされる新芽を水で煮出したお茶などもあります。

 また、葛は食用としても幅広く利用されています。若葉や新芽は天ぷらや炒め物、塩茹でにして和え物に。葛のつぼみや花はごはんとして炊いたり、酵母、酒、酢などに漬けたりして加工されています。

 和菓子への利用も盛んで、葛の根から取れたデンプン、葛粉を使った葛餅はまさに今の季節の定番! モチッとしていながらもキレがある食感はファンも多いはず。葛の旬は夏~秋にかけてで、旬のはしりといえるでしょう。秋の七草の1つとしても多くの俳句で秋の季語として詠まれているのです。

 そんな葛に含まれる栄養素ですが、花にはイソフラボンとサポニンが豊富です。イソフラボンは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと同様の働きをする栄養素のひとつです。マウスの実験にはなりますが、更年期障害モデルマウスに、葛抽出物を1日当たり20ミリグラム/キロ、8週間食べさせたところ、骨を壊す破骨細胞の量が減少し、大たい骨の骨密度の低下を抑制できたことから、骨粗しょう症や更年期障害の予防が期待されています。他にも、体内の糖質を脂肪に変えにくくする働きもあると報告されています。

 サポニンは、コレステロールをはじめとする血中の脂質を減らす働きがあることから、動脈硬化予防に効果的な栄養素と言えます。葛の根にはデンプンとイソフラボン誘導体のダイゼイン、プエラリンなどの有効成分が含まれています。これらは新陳代謝を高め、体を温める効果があります。解熱鎮痛作用、頭痛や肩こりなどの風邪症状、急性赤痢症、下痢、筋肉の緊張、口の乾き、糖尿病および心血管疾患治療に役立つとされています。葉の部分は、血糖値を下げる効果があるとされます。先ほどお話しした葛の青葉を搾った青汁は1日1杯飲むことで、その効果を発揮したという報告も。

 どの部分をとっても健康効果の高い葛、手に取ってみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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