老親・家族 在宅での看取り方

コロナに感染した外国人観光客からオンライン診療の依頼が

写真はイメージ(C)Chaay_Tee/iStock
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 先日のことです。コロナを発症した外国人観光客のオンライン診療を行いました。

 その方は、15歳の女性。夜、突然発熱し、咽頭痛もあったため、PCR検査を受けたところ、陽性と判明。保健所から医療機関の診断が必要との指示をされ、旅行会社が対応できる医療機関をネットで検索し、当診療所を見つけ、患者さんに代わってツアーコンダクターさんから連絡が来たのでした。

 さっそく私は保健所と連携を取り、療養ホテルへ移動するように要請。現在は宿泊していたホテルから、決められた療養場所に移動して過ごしています。幸いにも熱はすぐ下がり、大事には至っていないご様子です。

 その際、在宅往診の間の時間を縫って、本人とも何度かオンラインでやりとりしました。患者さんは日本語が話せないので、慣れない英語での対応となりましたが、比較的スムーズに問診することができました。

 こういったオンライン診療の場合、通常はLINEアプリを利用するのですが、その方の出身国の都合上、LINEアカウントをお持ちでなかったため、電話による診療となりました。

私「保険証ありますか?」

患者さん「保険証はありません。旅行会社保険があるため、診療代は実費でお支払いします。オンラインでカード決済できますか? 明日ホテルをチェックアウトするので、ご対応をお願いします」

 このように電話やLINEなどを用いて、離れた場所にいても患者さんと会話でき、対面の場合と遜色ないレベルで診療を行うことができます。薬の処方も、訪問薬局さんの導入で、自宅やホテルなど指定の場所に届けてもらえるので便利です。

 実はこのオンライン診療をコロナ禍の中、当診療所でも実施するケースが増加してきているのです。

 医師が足を運び、診察する「対面診療」に対し、スマホやタブレットさらには動画通話のような情報通信機器を通して診察するこの「オンライン診療」の最大のメリットは、なんといっても時間が短縮されることです。

 現在私たちの診療所では、患者さんやご家族でなにかちょっとした心配事や気になることがあった場合、いつでも電話をいただき、それに応対するようにしています。しかしそんな問い合わせも、例えば動画通信なら、声だけでなく相手の姿も確認できます。医療側としては、患者さんの状態をより把握できますし、患者さんやご家族においては、安心感が増すことでしょう。

 会計や処方薬の手配もインターネット環境さえあればオンライン上で行うことができます。

 特に最近のコロナ感染の予防という状況の中、安心安全を目指す在宅医療との親和性はますます高くなっていくのではないかと思われます。

 今後の通信機器の発展によっては、患者さん側の選択肢を増やし、さらなる可能性を広げていく。よりテーラーメードな在宅医療を実現する重要アイテムとなるのではないかと期待しているのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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