健康長寿に役立つ高齢薬膳

【海苔】「腎」を補い耳鳴りなど老化トラブル全般に威力を発揮

海苔のブラックパスタ(提供写真)
海苔のブラックパスタ(提供写真)

 老化が現れやすい体の部位といえば、耳。加齢によって耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」という感覚器官が異常を来し、50歳前後から耳鳴りや難聴といったトラブルが多くみられます。

 人間が音を聞くときには、鼓膜が音によって振動して耳の奥へと伝わっていきます。さらに蝸牛が音を電気信号に変えて、脳に伝えることによって音として認識されるのです。

 しかし、蝸牛が異常を起こすと電気信号に変える機能が低下して、脳が音を認識することが難しくなってしまいます。そのため脳は聞こえない状況をカバーするために、過剰に反応して電気信号を増幅するという変化を起こします。脳の過剰な反応は、実際に音が鳴っていないときにも起きるため、「耳鳴り」という現象が現れてしまうのです。

 ひんぱんな耳鳴りは過度なストレス、集中力の低下、睡眠障害などにつながります。慢性化すると生活の質が落ちて、体調を崩す原因になるため「たかが耳鳴り」と思わず早めの改善が必要です。

 中医学では、耳は「腎」と呼ばれる臓器との関係が深いと考えます。腎は人間の成長や老化をつかさどり、その働きが低下すると耳に不調が現れやすくなるのです。

 腎の機能低下による耳鳴りは、ジーッというセミの鳴き声のような音で、夕方以降に悪化しやすく、夜間静かになると気になる傾向があります。つらい耳鳴りを改善するためには、しっかりと腎を補う食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは海苔。中医学では黒い食材は腎の働きを高める働きが優れていると考えます。海苔は腎のパワーをアップする優れた効能があります。老化によるトラブル全般にも威力を発揮。また、薄毛や白髪など髪の老化にも効果が高いとされています。さらに、利尿・解毒作用もあり、むくみの改善や体内の老廃物を排出して体調を整える働きもあります。そのほか、咳(せき)や痰(たん)といった喉のトラブルの改善にも役立ちます。

 海苔はなんといっても手軽に取り入れられるのが魅力です。「ごはんの友」としてだけではなく、「若返りの友」としてもシニアの食卓に欠かさず常備したいもの。刺し身を巻いて食べたり、サラダのトッピングにするなど多用してみましょう。汁ものに入れるのもおすすめです。海苔のアミノ酸含有量はシイタケやかつおぶしの3~5倍あるので、驚くほどダシが出て味わいが深まります。

 海苔はごはんとだけではなく、パンやパスタなど洋風料理にアレンジしてもおいしくいただけます。トーストにチーズと一緒にのせたり、ポテトサラダやローストビーフをのせてカナッペ風にいただくのもおすすめです。

 海苔の耳鳴りを改善する効果を高めるためには、同様に腎の働きを高める黒ごま、くるみ、ナガイモ、黒豆、ホタテなどと組み合わせるとよいでしょう。

■海苔高齢薬膳レシピ

海苔のブラックパスタ

 腎の働きを強める海苔と、ホタテ、黒ごま、くるみを組み合わせたレシピ。海苔の風味に黒ごまのコクが加わって、あとを引くおいしさです。ホタテ缶のうまみで味が簡単に決まります。わさびも味の決め手。

【材料】2人分

●海苔  全形2枚
●ホタテ缶(小)  1缶
●黒すりごま  大さじ2
●くるみ  大さじ2
●バター  10グラム
●パスタ  200グラム
●わさび  少々
●刻みネギ  適量
●塩  適量

【作り方】 

 パスタは袋の表示通りにゆでる。ゆで汁2分の1カップを残して、ザルに上げて水気をきる。ボウルに細かくちぎった海苔を入れ、ゆで汁を加え、混ぜて溶かしたらパスタを入れる。

 続いてバター、黒ごま、わさび、ホタテ缶を缶汁ごと加えて全体を混ぜる。塩で味を調整して器に盛り、刻んだくるみと刻みネギを散らす。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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