感染症別 正しいクスリの使い方

【突発性発疹】乳幼児が生まれて初めて経験する高熱で座薬が使われる

写真はイメージ
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「突発性発疹」は乳幼児期に発症する発熱発疹性疾患で、生まれてから数カ月以上たった頃の乳児に38度以上の高熱が突然出現し、3日間ほど発熱が続いた後に発疹が見られる疾患です。通常4~12カ月の間の子供がよくかかるのですが、この時期は母親からもらっていた免疫が弱くなってくる時期と一致するとされています。

 ほとんどの子供がかかる疾患で、高熱があっても比較的機嫌がよい、咳や鼻水といった感冒症状がほとんどないといった特徴があり、典型的な熱や発疹などの症状が出ない場合や、下痢になることもあります。

 また、時には熱性けいれんが起きるケースもあります。

 原因はヒトヘルペスウイルス6型及び7型への感染です。感染経路は正確なところは不明ですが、家族の唾液を介して感染するとの仮説が有力視されています。また、この30年ほどで突発性発疹の罹患年齢が上昇しており、その要因として離乳食を口移しで与える機会の減少や、出生数減による年長児との接触機会の減少などが考えられています。

 コロナ禍による感染対策の徹底によって軒並み減少傾向にある感染症が多い中、突発性発疹の感染者数は減っていません。そのため、やはり外出時ではなく家庭内での感染が原因であると考えられます。

 通常の場合、予後良好のため自然に治るまでは症状を緩和する解熱剤のみで経過をみることがほとんどです。解熱剤は多くの場合、アセトアミノフェンの座薬が処方されます。

 子供が突発性発疹にかかって、座薬を初めて使う方もいらっしゃるでしょう。必要に応じてワセリンやサラダオイルなどを座薬に塗るとお尻から入れやすくなります。

 座薬は外から完全に見えなくなるまでお尻の奥に指で押し入れましょう。肛門の刺激により外に出てしまうこともありますが、まだ座薬の形があるようなら、再挿入して問題ありません。熱が高い時は脱水症状にならないよう、まめにミルクなど水分を与えてください。

 突発性発疹は生まれて初めての高熱であることが多く、特に初めてのお子さんの場合には両親ともにパニックになっているケースもあります。原因や対処法を知識として知っておくことはとても大切です。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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