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認知症になりやすい血液型はあるのか? 世界中で研究が進む

写真はイメージ 
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 脳卒中や新型コロナウイルスの重症化率など血液型と病気の関連性は多く指摘されています。認知症もまた血液型との関係を浮かび上がらせる研究が世界中で行われています。

 たとえば、2014年9月10日発行の米医学誌「Neurology」が興味深い研究結果を発表しています。米バーモント大学医学部の研究者らが、約3年半にわたって45歳以上の約3万人を対象に調査を行った結果、血液型がAB型の人は、ほかの血液型の人と比べて、「加齢とともに認知機能や記憶に障害が生じる可能性が高い」と報告しました。

 調査では記憶または認知機能に障害が生じた495人のグループと、障害が生じなかった587人を比較しています。

 米国の全人口のうちAB型の人は4%いますが、認知機能に障害が生じたグループの6%がAB型だったと結論づけました。とくに、最も認知機能に障害が生じる可能性が低いO型と比較すると、1.82倍もリスクが増加しました。

 こうした研究結果によると、血液中にある血液を固まらせるタンパク質(血液凝固第Ⅷ因子)の濃度が高いほど認知機能の障害が生じるリスクが上がることが分かっています。AB型はほかの血液型の人より、凝固によるタンパク質の濃度が高かったのです。

 この見解には一理あると考えています。なぜなら人間は加齢とともに血管が詰まりやすくなり、認知症を発症する原因でもある脳卒中や心臓病などの病気を発症しますから、血管が詰まりやすい血液型の人がよりリスクが高いのは当然と言えるでしょう。

 心臓病のリスクについては、11年に米ハーバード公衆衛生大学院が発表した約9万人を対象にした調査で最も低いO型に比べて、AB型が1.23倍高いと報告しています。さらに心臓病と認知症の関係も米国心臓学会の「心臓病・脳卒中統計」(22年版)で、高血圧といった心臓病のリスクを高める生活習慣が「脳卒中やアルツハイマー病といった認知症の発症リスクを高める」とまとめています。

 どの血液型であったとしても、血管の詰まりや高血圧を予防することが認知症のリスクを下げることにつながります。

▽今野裕之(こんの・ひろゆき) 2001年日本大学医学部卒業後、慶応義塾大学病院、日本大学医学部付属板橋病院、西東京市役所精神科産業医、医療法人回生会新宿溝口クリニック勤務(非常勤)などを経て、16年からブレインケアクリニック院長。日本認知症学会、日本抗加齢医学会などに所属。認知症予防、老化予防、精神疾患全般のテーマで講演も多数。

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