ぐっすり眠れない…すぐできる睡眠の質を向上させる4つのポイント

写真はイメージ(C)Kiwis/iStock
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 作業療法士の菅原洋平氏は国立病院機構で脳のリハビリテーションに従事していた経歴から、現在、クリニックの睡眠外来で、脳や生体リズムにアプローチした睡眠の質を高める方法を指導している。ポイントを聞いた。

 マットレスなどを扱う「エマ・スリープ」の調査によれば、9割の人が睡眠の質に関して何らかの悩みを抱えており、悩みの上位3つが「寝ても疲れが取れない」「途中で目が覚める」「すっきり起きられない」だった。菅原氏が言う。

「睡眠の悩みを抱える方に話を聞くと、多くの方が、睡眠欲求に基づいて寝ているのではなく、『寝る時間だから』などと時間管理で寝ています。しかし睡眠には生体リズムや脳が関係しており、それを考慮せずにベッドに入ると、寝つきが悪かったり、起床時間の何時間も前に目が覚めたりする。質の高い眠りを得るには、いわばトレーニングが必要です」

 具体的にはこうだ。

【1】目覚めたら窓から1メートル以内に寄る

 脳の松果体から分泌されるホルモンに、メラトニンがある。体内時計に働きかけ、覚醒と睡眠を切り替える働きをする。

「メラトニンは、網膜から光を感知すると分泌がストップし、16時間後に増えます。このリズムを強化すると朝スッキリ起きられ、16時間後の夜に自然に眠くなるのです」

 たとえば朝7時に起きたら、夜11時には眠くなる。「光を感知する」が重要で、太陽の光が最適。起床後は速やかにカーテンを開け、窓から1メートル以内に寄る。日の出が遅い冬は、室内灯やデスクのライトに近づいて1分ほど過ごすのでもいい。スマホの光は程度が弱いので、「起床後すぐスマホを見る」ではダメ。

【2】就寝3時間前から部屋を暗めにする

 一般的な部屋全体を明るくするシーリングライトを使うと、部屋の明るさは500ルクス程度。この部屋で3時間過ごすと、夜に分泌されるメラトニンが半減する。

「睡眠の質が悪くなる上、メラトニンが少ないと昼間に体に蓄積された活性酸素が除去されず、体の疲れが残ります」

 工夫次第で部屋は暗くできる。風呂は電気を消す。間接照明にする。明かりの度合いを調整できる照明器具を使う、など。

【3】起床11時間後に体を動かす

 内臓の温度、深部体温は、起床後徐々に上がり、11時間後くらいにピークになる。その後徐々に下がり、22時間後くらいに最低になる。深部体温が高いほど元気で、低いほど起きていられない状態になる。

「起床後11時間後といえば、大体の人では夕方になるでしょう。このピーク時にもっと深部体温を上げるようなことをすれば、夜には急激に深部体温が下がり、深い眠りに入っていきやすくなる」

 深部体温を上げるには、体を動かすこと。ウオーキングでも早歩きでもいいが、ベターなのは筋トレ。筋肉量が多いと熱産生が高まり、睡眠の質が向上するのだ。筋肉は下半身に集まっているので、スクワットやランジなどがおすすめ。

【4】眠くなるまでベッドに入らない

 ベッドに入ってスマホを見たり、本を読んだりといったことはしない。ベッドは、寝る以外に使わないことが肝心だ。

「脳は、自分の行動とその場所をセットで記憶し、次に同じ場所へ行く時、同じ行動ができるように準備します。ベッドでスマホを見たり本を読んだりすると、脳は『ベッド=画像を見たり文字を読む場所』と記憶する。そうではなく、ベッドは睡眠という作業をする場所だと刷り込ませるのです」

 ここに挙げた項目を毎日はできなくても、週の過半数を目指そう。

「望ましいリズムが過半数になれば、それが基準になります。睡眠は2週間単位で変化し、最初の2週間のリズムが強化されると、次の2週間が同調してより整う。とにかく続けることです」

 秋の夜長を、満足いく眠りで。

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