定期的に運動することは、健康に良い影響を与えると考えられています。
実際、1日の歩数が多い人ほど、糖尿病や心臓病の発症、がんによる死亡率が低いことを報告した研究もあります。
「歩数」は運動量を評価する指標として分かりやすいもので、適度な運動量に相当する歩数は1日に6000~8000歩だといわれています。
高齢化が進む先進諸国では、認知症を効果的に予防する生活習慣に関心が集まっています。定期的に運動することはまた、認知症の予防にも効果が期待できるかもしれません。
そのような中、1日の歩数と認知症リスクの関連を検討した研究論文が、米医師会が発行している神経学の専門誌に2022年9月6日付で掲載されました。この研究では、英国の大規模データベースに登録されている40~79歳の7万8430人(平均61.1歳、男性44.7%)が対象となりました。
研究参加者の歩数は手首に装着する小型の計測機器を用いて測定され、認知症リスクとの関連性が検討されています。
なお、結果に影響し得る年齢、性別、教育水準、喫煙・飲酒習慣などの因子について統計的に補正を行い、解析されました。
中央値で6.9年にわたる追跡調査の結果、認知症の発症リスクが最も低下した歩数は、1日当たり9826歩で、最も少ない歩数と比べて51%のリスク低下を認めました。また、認知症の発症リスクが統計的にも意味のある水準で低下した最低歩数は3826歩で、最も少ない歩数と比べて25%のリスク低下を認めています。
論文著者らは、認知症になりにくい健康的な人ほど身体能力が高い可能性に言及しつつも、「歩数が多いことは認知症の発症リスクの低下と関連しており、最適な歩数は1日当たり1万歩弱と推定される」と結論しています。