科学が証明!ストレス解消法

口にするなら「プラスの言葉」 それがあなたを幸せに導く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私たちが思っている以上に、脳は自分の体に指令を与えていません。どちらかというと、脳はアシストをするための指令を出してくれる存在です。つまり、自分の言葉で「私はこういう人間だ」と言ってしまえば、脳は「あなたはそういう人間なんですね」とアシストをするということです。

 たとえば、「自分はダラダラしてしまうダメ人間だ」と思い込んだり、言葉にしたりすると、脳は悪い方向へとアシストしてしまいます。ダメになればダメになるほど、負の循環へと誘われてしまいます。

 パプアニューギニアには赤色や青色という概念がなく、色の表現として「明るい」とか「暗い」といった区別しかないダニ族という部族がいるといいます。

 人間の色彩感覚として、原色に近い色というのは生物的な本能により何となく区別がつくため、その部族に赤色を見せた上で、「同じ色を選んでください」と言うと、当然、赤色を選びます。ところが、緑色のような中間色に関してはなかなか把握できないそうです。

 しかし、「これは『緑色』というんですよ」とその色を表す言葉を教えると、その後は緑色を区別できるようになったといいます。言葉によって認識できるようになったのです。

 言葉は、それだけ認識、その人の見える世界に関わります。「今日もできなかった。やっぱり私はダメ人間だ」と思えば、どんどんダメな方へと向かってしまいます。特にネガティブな言葉は、ポジティブな言葉より影響があることがさまざまな研究で明らかになっていますから、できるだけプラスの言葉でラベリングをしていくことが重要になります。

 また、先行情報に引っ張られて行動が変わってしまう傾向を、「フロリダ効果」といいます。

 米ニューヨーク大学のバルフらは、30人の学生を被験者に「言葉の発想実験」と題して、次のような実験(1996年)を行っています。

 被験者を2つのグループに分けた上で、Aグループには「古い」「引退」「しわ」「1人」といった高齢者や老人を連想させる言葉ばかりを並べ、それを文法として正しく並べ替えてもらいました。そしてBグループには、中立的な単語ばかりを用意し、正しく並べ替えてもらいました。

 実は、この実験では「言葉の発想実験」はカムフラージュで、言葉が被験者たちにどのような効果をもたらすのかこそが本当の狙いでした。

 実験終了後、研究チームは2つのグループが、どれくらいの速度でエレベーターまで向かうかをストップウオッチで測ったところ、Aグループの歩行速度は平均8.28秒。一方、Bグループは平均7.30秒だったそうです。異なる被験者30人で追加実験をしたところ、結果はほぼ同じだったといいます。

 一緒にいて、「暑い」とか「疲れた」などと何度も口にする友人や同僚がいると、こちらまでドッと疲れが押し寄せる気分になりませんか? 言葉をはじめとした先行する情報があると、脳はその気になってしまうのです。言葉が自分をコントロールする。これを忘れないように。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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