乳がん経験者だからわかること(下)予想外の出費で悲鳴 ウィッグは50万~60万円

ウィッグなど治療費以外の出費が多い(C)PIXTA
ウィッグなど治療費以外の出費が多い(C)PIXTA

 乳がん経験者であるファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん(53)、たなかなおさん(45)、インスタグラムで乳がん経験について発信するEMIさん(35)の3人に聞く第2弾だ。

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■乳がん初発で標準治療の場合、かかる費用は年間50万~100万円

「厚労省のデータにもありますが、乳がんが見つかり標準治療を受けた場合、かかる金額は年間50万円から100万円くらいです」(黒田さん)

 ただしこれはあくまでも目安。例えば乳房の全切除術を受け、乳房の再建を希望したとする。乳房再建は保険適用なので一般的な収入なら高額医療費制度の利用で9万円ほどの自己負担で済むが、アレルギーがあるなどさまざまな理由で保険適用ではない治療を選ぶしかないことがある。

「また、早期がんは受ける治療がある程度決まっていますが、再発、転移となると、効く治療をその都度選択していくため、予想が立てづらい。どこまで治療が続くかもわからず、金額の目安が見えない」(黒田さん)

■治療費以外の予想外の出費が多い

「MICIN少額短期保険株式会社」が乳がんと診断されたことがある人を対象に行ったインターネット調査では、56%が予想外の出費を感じていた。たなかさんは「ウィッグが20万円ほどしました。でもこれは安い方で、50万~60万円するものも」。

 黒田さんは「がんというと治療費がかかるというイメージが強いが、がんになってわかるのは、治療費以外の出費の多さ」と指摘する。

「私の場合、個室ベッド代が1日3万円プラス消費税が痛かった。全額自己負担で高額医療費の対象にもなりません。ウィッグなどもそうですね。小さい子供がいる人ではシッターさんを雇うなど家事・育児をアウトソーシングするためのお金がかかる可能性もあります」(黒田さん)

■保険は内容や加入のタイミングを考慮

 備えあれば憂いなしの「保険」だが……。

「治療費だけではなく生活費もあるので、保険の一時金で賄えたのが助かりました。ただ、保険の内容は確認しておくべきです。今は、先に抗がん剤治療を受けてがんを小さくしてから手術、というケースも少なくありません。私の場合もそうで、術前の抗がん剤治療は外来で受けたため、『入院以降』という条件の保険は、術前抗がん剤治療には下りませんでした」(EMIさん)

 黒田さんは、がん保険に入ることを考えているなら、がん検診の前の入会を、既に入っているなら、がんと闘える内容かどうかの確認を勧める。

「がんが見つかってからでは、選択肢が限られます」(黒田さん)

■余分な情報は切り捨てる

 インターネットで検索すると、多種多様ながんの治療法が出てくる。

「今は余分な情報を切り捨てる時代。早期発見しても、適切な治療にたどり着かなければ生存率は落ちていきます。最初の入り口はすごく大切で、エビデンスのある情報を選ぶ。どこで探せばいいのか? まずは国立がん研究センターなどのホームページを見て、そこからつながっているものをたどっていく」(黒田さん)

■病院選びは症例数の多いところを

 黒田さんは最初にがんの診察を受けた地方病院でステージ2Bと診断され「すぐに抗がん剤治療を」と言われた。その後、がん研有明病院でセカンドオピニオンを受け、当初のステージより軽いステージ2Aとなり、抗がん剤治療は不要となった。

「がんの診断にはグレーの部分があり、医師として、どちらか迷うなら、念のため強い治療(黒田さんの場合では抗がん剤)をやっておこう、ということがあります。だから最初は『ステージ2B。すぐに抗がん剤』となったのでしょう。ところが症例の多いがん研有明病院ではグレーの症例数も多く、より適切な判断ができたのだと考えています」

 乳がんに限らないが、可能であるなら、自分が診断された病気を多く診ている病院でセカンドオピニオンや治療を受けた方がいい。

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