時間栄養学と旬の食材

【菊】ビタミンAやB1が豊富で「目の疲れ解消」に役立つ

食用菊にはアンチエイジング効果が
食用菊にはアンチエイジング効果が

 五節句のひとつ「重陽の節句」は「菊の節句」とも呼ばれて古くから親しまれてきました。栗ごはんや秋ナスも食卓に並びますが、主役はなんといっても菊です。食用菊を料理にしたり、菊酒をたしなむほかにも、菊を浮かべた菊湯に入ったり、枕に菊を詰めた菊枕に寝ることで、旬の食材から生命力をいただき、邪気払いをするとともに、不老長寿や繁栄を祝います。

 重陽の節句は、新暦と旧暦の季節感がずれてしまうことから、五節句の中でもなかなか馴染みのない行事のひとつになってしまいましたが、九州北部などでは秋の収穫祭と合わせて「お九日(くんち)」と呼ばれて親しまれており、今でも新暦の10月や11月ごろに盛大に祝われているそうです。

 菊花は古来、漢方として使われていて、眼精疲労に効果的といわれています。中国でも、「目の疲れ解消といえば菊花」といわれるほどで、やはり、目の健康に良いとされるビタミンB1、ビタミンE、目の疲れを癒やす消炎などの効能があるクサンテノンとビタミンAがとても豊富で、中国では食用菊を乾燥させた菊のお茶がよく飲まれているそうです。

 目に限らず、疲労が進めば老化も促進します。食用菊を用いた実験によると、AGEsと呼ばれる老化促進物質の生成を抑えてくれる効果や、熊本県産の“不知火菊”にしみ抑制効果が見られたという研究結果も報告されています。このことからも、菊が持つアンチエイジングの効果の高さがわかります。

 また、菊花に含まれるポリフェノールには、体内で作られる尿酸の量を減らして、体外へ排出される尿酸の量を増やす働きがあることもわかっています。尿酸は体内で少量なら必要な物質ですが、多くなりすぎることで痛風の症状が出やすくなってしまいます。尿酸値が気になる方にもおすすめの食材です!

 ほかにも菊花を使った実験があります。菊にはリラックス作用の高いリナリンやアカセチンという物質が含まれていて、うつ症状や不眠に役立つことが期待されているのです。疲れを取ったりリラックスしたい夜、ぜひ食事に菊を添えてみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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