寝具製作技能士・大郷卓也氏が教える「体がよろこぶ寝姿勢がつくれれば朝までぐっすり」

「寝装の大郷 ねむり家」の大郷卓也氏
「寝装の大郷 ねむり家」の大郷卓也氏(C)日刊ゲンダイ

 起きたときに「肩が痛い」「腰が痛い」というのは、長時間ずっと同じ姿勢で眠っているために起こる。

「気持ちよい朝を迎えるためには、体がよろこぶ“寝姿勢”が大切です」

 こう話すのは、国家資格「寝具製作技能士」で、富山県で創業明治41年の布団店「寝装の大郷 ねむり家」を営む大郷卓也さん。

「ぐっすり眠るためには『枕』はとても重要なアイテムです。海外製の安価な枕も流通していますが、たかが枕と思ってはいけません。寝ているときに敷布団やマットレスと、頭部・頚部のすき間を埋めてくれる枕をぜひ選んでいただきたい。もちろん、すき間は体形や性別などによって人それぞれ。靴や洋服に自分のサイズがあるように、自分に合った枕を選びましょう」

チェックシート
チェックシート(C)日刊ゲンダイ
「体がよろこぶ寝姿勢」を合わせて教える

「ねむり家」では個々の好みやサイズに応じたオーダーメードの枕を作製。中身には「炭パイプ(やわらかめ)」「そばがら(かため)」「ヒノキチップ(かため)」「岩塩(かため)」といった天然素材も使用している。

「近年、『寝返りが打ちにくい』などうまく睡眠が取れていない人は多くなったと感じます。特に新型コロナの影響により、眠りが浅くなったと感じられている方々が増加しています。これは布団屋の5代目として解決すべき大問題。ですので、枕を提供するだけでなく来店された方々には『体がよろこぶ寝姿勢』も合わせて教えさせていただいております」

 9項目からなる「睡眠と健康に関するチェックシート」を用意し、その人だけの「マイ枕」が完成する。

厚労省「e-ヘルスネット」から
厚労省「e-ヘルスネット」から
「子供」の頃の眠り方に戻す方法

 どうやら、ぐっすり眠るには枕が重要のようだ。

「寝ているときの顔の角度は約5度が理想とされます。人は睡眠中におよそ20回ほど“寝返り”を打つとされ、首や肩、背中や腰に負担をかけないよう無意識に楽なポジションを保とうとします。基本的にあおむけのポジションで眠ることが良いとされますが、朝起きたら『枕がどこかへいってしまっていた』というような人は、その枕が自分に合っていない可能性があります。枕が合っていないと、寝返りの回数が減ってしまい、起きたときに『肩が痛い』『腰が痛い』となってしまうのです。つまり、寝返りを妨げず、むしろ促すような枕が理想なのです」

 一方、子供の頃は熟睡できていたはず。これにも理由があるようだ。

「あなたが子供の頃はどうだったでしょうか? 多少寝相が悪かったとはいえ、縦横無尽に寝返りを打っていたでしょう。夜中にトイレに行くこともなく、何が起きても目覚めないほど熟睡できた。これは寝返りで同じ寝姿勢をつくらず、体がよろこぶ寝姿勢を取っていたからです。大人でも寝返りの回数が戻れば、『おしっこで起きる』回数自体も減ることになります」

 自分の体形に合った枕を選ぶことが重要のようだが、ずっと同じ枕を使い続けていいものでもない。

「枕が変わると眠れないと言ってずっと同じ枕を愛用している人がいますが、経年劣化で高さや硬さが変わるなど、枕にはどうしても寿命があります。日頃、車や服は頻繁に替えるのに、こと枕に関しては無頓着が多い気がします。4~5年で買い替えるのが理想的ですね」

 ぐっすり眠る鍵は、うまく寝返りをさせてくれる枕にありそうだ。

《寝具製作技能士》厚生労働省所管の国家資格。寝具は睡眠の質に大きく影響を与えるもので、それら寝具の製作技術を認定する制度。受験資格には7年以上(1級)の実務経験などが必要。試験は学科と実技がある。

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