科学が証明!ストレス解消法

自問自答の「独り言」でセルフコントロール力がアップする

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 独り言が多い人、いますよね?

「コレをやって、その後にアレをやって……」というように、今から取り組むことに対して、まるで自問自答しているかのように独り言をつぶやく。一見すると落ち着きのない人に見えてしまいますが、実はこうした確認作業的な独り言は、思わぬ効果を発揮することが判明しています。

 トロント大学のチュレットとインズリクトは、自問自答するとどのような効果があるのか実験(2010年)を行っています。

 チュレットとインズリクトは、まず被験者を2つのグループに分けました。それは、「自分のやろうとしている行動は正しいのか? 間違いのない選択か?」と自問自答したグループ(A)と、利き手ではない手で円を描き続けさせられ、自問自答できない状態にしたグループ(B)です。

 その上で、双方のグループに、指定された色の図形が表示されたらボタンを押すという課題をさせたところ、グループAは通常時より30%ほど正答率が高くなったそうです。対して、独り言を封じられたグループBは変わらなかったといいます。つまり、自問自答によって、正しい判断ができるようになる傾向が高まることがわかったのです。

 チュレットとインズリクトは、「脳内の独り言」を使えない場合は、より衝動的に行動しやすくなると指摘し、自分の行動を言語化して自分に伝えられないと、セルフコントロール能力が低下してしまうと話しています。

 理性には、言語の力が欠かせません。たとえそれが、脳内のつぶやき(独り言)であっても、効果はてきめんです。もしもあなたが、何かの課題や問題に直面しているなら、自問自答して、心の内を言語化するといいでしょう。自分が何に迷い、あぐねているのか、その交通整理がしやすくなり、解決までの糸口をつかみやすくなるはずです。

 また、「つぶやく」という意味ではネガティブな感情をSNSで吐き出すと、気持ちが楽になるという研究結果(2018年)も興味深いです。

 北京航空航天大学のファンらが中国・アメリカ・オランダの研究者と共同で、7万4487人のツイッターユーザーを対象に行った調査によると、ポジティブな気分のときに自分の気分に関してつぶやくと、1時間ほどポジティブな気分が続き、その後、通常の気分に戻ることが判明しました。

 一方、ネガティブな気分のときに自分の気分に関してつぶやいた後は、10分ほどで通常の気分に戻り、それが1.5時間程度続いたのです。つぶやくだけでポジティブな感情は上昇し、ネガティブな感情が減少することがわかったのです。

 即効性の高い気分回復法──と言いたいところですが、ひんぱんにネガティブな内容をつぶやき、ストレスを発散することはおすすめしません。あくまでSNSは楽しんで利用するものです。昨今は誹謗中傷を筆頭に、ネガティブな発言を繰り返すユーザーも多いため、問題視もされています。SNSは適度に楽しみつつ、上手に活用するように。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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