約2000年前にモンゴルから家畜として日本に伝わった馬。熊本城を築いた加藤清正は、豊臣秀吉と朝鮮出兵中、食糧難に陥り軍馬を食べました。そのおいしさを帰国後に広めると、領地の熊本で馬刺しが有名になり、全国に広がっていったとされています。
江戸時代も馬肉を食べる文化がありました。体を冷やす効能から風邪に効くといわれていて、現代の民間療法にも根付いているそうです。「さくら肉」は馬肉を指しますが、これには諸説あり、肉食を禁止されていた江戸時代の隠語だったという説、馬肉が桜色のように見えたからという説、千葉県の「佐倉」に幕府牧場があり、多くの馬が放牧されていたからという説、桜が咲く季節に脂がのっておいしい肉だからという説などさまざまです。
そんな馬肉は他国ではあまり食べられていないのが現状でした。しかし、馬肉の栄養価の高さが評価され、西ヨーロッパのいくつかの国で消費量がゆっくりと増加しているそうです。
部位によって若干の誤差はありますが、赤身の馬刺し(ロース・イチボ・丸モモなど)のタンパク質は牛肉と同じ20グラム/100グラムにもかかわらずエネルギーはササミとほぼ同じの110キロカロリー。鉄分とカルシウムは豚肉や牛肉の2~4倍あることがわかっています。また、通常の食事では摂取することが難しいビタミンやミネラルが豊富で、目の健康に必要なビタミンAや抗酸化作用のあるビタミンEが多く含まれます。
赤身の馬肉には少ないのですが、コレステロール値を下げたり、血液循環を良くしてくれるn3系必須脂肪酸も多く含まれています。脂質が多い馬肉はタテガミと呼ばれる部位です。必須脂肪酸は多いですが、その分エネルギーが高くなるので食べ過ぎには注意しましょう。このn3系脂肪酸は朝に食べることでシャキッと体が目覚める働きがあることも報告されています。
さらに、馬肉に含まれるグリコーゲンは、疲労回復に非常に役立つ栄養素です。100グラムあたり2290ミリグラム、牛肉が670ミリグラム、豚肉が433ミリグラムなので、馬肉に含まれるグリコーゲンの多さがわかります。グリコーゲンを摂取することで、集中力を高める効果もあることがわかっています。脂質の少ない赤身はぜひ夜に。翌日に疲労をため込まない体が作れる可能性が高まります。
時間栄養学と旬の食材