老親・家族 在宅での看取り方

在宅医療で急に悪くなったらと心配…どこに連絡したらいいのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 在宅医療をめぐる環境も日々変化しています。中でも一番の変化といえば、病院側の在宅医療に対する認識といえるかもしれません。

 在宅医療が患者さんにとって、信頼に足りる医療機関なのか? かつては病院側も、疑心暗鬼だったように思います。しかし現在では、在宅医療に理解と信頼を寄せてもらえるようになりました。私たち診療所が発足した当初、病院や訪問看護の事業者さんからの紹介は年間数件ほどだったのが、年々増加。いまや3桁に迫ろうかという勢いです。

 患者さんやそのご家族側の在宅医療に対する認識も確実に変わってきており、偏見や誤解が少しずつ解けつつあると感じています。

 一般的に入院する患者さんが退院をする場合、その退院の日時などの調整は、病院内の「看護相談室」や「退院支援センター」という部署などが行っています。これらの部署が、退院後の在宅医療のクリニックや訪問看護ステーションなどをどこにするのかまでも決める場合が多くあります。

 その際には患者さんの要望やリクエストをより一歩踏み込んで聞き、患者さんのパーソナリティーに合った診療所を選定しようと努める、いわばコーディネーター的な役割も担うようになっているわけです。

 先日、旦那さんと娘さんと3人で暮らす90歳の女性患者さんが病院の紹介を受け、私たちの診療所で在宅医療を開始しました。

 この方はリウマチに伴い肺胞の壁(間質)に炎症や損傷が起きる関節リウマチ性間質性肺炎を患っており、また、その治療で投与するステロイド剤の副作用で糖尿病を併発。C型肝炎、そして心室の収縮が不規則になる心房細動も患っておられました。

「酸素を使わずに苦しくないですか?」(私)

「大丈夫です」(患者)

「通院もされるんですよね?」(私)

「はい」(患者)

「インスリン注射は今度から自分でやらなきゃいけないんですか?」(患者)

「そうですね。これからインスリンをご自宅で行ってもらいますね」(私)

「はい。退院するときに指導を受けました。娘がやります」(夫)

 最初に通院の意思を確認し、自宅で行うさまざまな対処について、ご本人とご家族とともに一つ一つ在宅医療のカタチを決めていきました。

「いつ急に悪くなるか心配です。悪くなったらどこに連絡したらいいのか」(夫)

「まずは看護師さんに連絡してください。もちろん私たちに連絡してくださっても大丈夫です。病院へも連絡できますので、みんなで連携取りますから安心してください」(私)

「そうですか。なら安心です」(夫)

 まるで一つのチームとしてご家族、訪問看護、病院その他それぞれと連携を取りながらすすめることで、在宅医療の可能性はまだ広がると信じています。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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