健康長寿のカギは腎臓にあり

再検査では腎臓だけでなく全身の健康状態もチェックしたい

写真はイメージ
写真はイメージ

 前回、健康診断などで「腎臓の再検査を」と言われた場合はどうすればいいのかをお話ししました。今回は、当院の例となりますが、再検査について、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。

 慢性腎臓病になった患者さんは「透析予防・心血管予防・寝たきり予防」といった「3つの予防」を意識する必要があると私は考えています。

「透析はわかるけど、なぜ心血管や寝たきりの予防を考えるの?」──そんなふうに感じた人も多いかもしれません。

 実は、腎臓が悪くなった人は、そうでない人と比較すると、心不全や脳卒中などの心臓や脳の病気になる確率が2~3倍程度高かったり、筋力が落ちたり、骨がもろくなることが原因で身体機能が7割程度になるといわれています。

 そのため、「腎臓の再検査を」と言われて来院された患者さんには、当院では必ず「腎臓を詳しく調べるだけでなく、全身の評価を行う」ことにしています。

 腎臓の検査として健康診断などで使用されるのが「クレアチニン」の値。ただし、クレアチニンは筋肉量などの影響を受けて、正確な腎機能を反映しないこともある。そのため、その影響を受けにくいシスタチンC検査を行うことにしています。その他、尿中のタンパクの量をグラムで測定する尿タンパク定量検査も行います。

 次に腎臓エコー。腎臓エコーについては、これだけで1回分の記事ができそうなぐらいにいろいろお話しできるのですが、ここでは腎臓エコーでなにがわかるのかを簡潔に箇条書きで伝えることにします。「腎臓の大きさの異常」「左右差があるかどうか」「腎臓の腫れ」「腎臓結石」「腎臓の腫瘍」「嚢胞」など。腎機能が悪くなる原因を推測したり、腎臓の腫瘍などを見つけたりするために欠かせない検査です。次回、さらに詳しくお話ししたいと思います。

 腎臓の詳しい検査を行うと同時に、腎臓以外の全身の評価を行うための検査も行います。血液検査で血糖や脂質の評価を行ったり、頚動脈エコーや血圧脈波検査などで動脈硬化のチェックを。また、Inbody検査で体を構成する体水分、タンパク質、ミネラル、筋肉量や体脂肪を定量的に分析します。この結果に基づいて、腎臓だけでなく腎臓病に伴う全身の合併症に目を向けて、運動指導や栄養指導を行うことにしています。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

関連記事