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「認知症専門病院」への入院条件は?どんな処置が行われるのか

写真はイメージ(C)kazuma seki/iStock
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 認知症を発症し、在宅介護が困難になると、入居先として特別養護老人ホーム(特養)やグループホームといった高齢者の介護施設が検討されます。しかし、暴力をふるったり、暴言がひどかったりして、同世代の高齢者や同じように認知症を患っている方との共同生活が難しいと判断される患者さんは、認知症疾患医療センターを包括した「認知症専門病院」に入院されるケースがあります。認知症疾患医療センターには、総合病院型、総合病院と連携した単科病院型、外来のみの診療型の3種類があります。いずれも、認知症に関する詳しい診断を行うほか、行動・心理症状(BPSD)や体の合併症への対応、専門医療相談などを担う医療機関で、併設または提携する入院施設があります。

 入院の条件として、要介護度よりも、本人の精神状態や介護者である家族の状況が優先されています。食事や排泄(はいせつ)、軽い運動や着替えといった日常生活が営めても、自傷加害行動や精神保健福祉法における入院基準(精神疾患など)が認められた場合は入院の対象になります。ほかにも、幻聴幻視、うつ症状、徘徊、薬を飲んだり治療を受けることを拒否といった行動があれば、入院が可能になります。全国に250カ所以上の施設がありますし、対象者も多くはないので、特養やグループホームほどの順番待ちはありません。

 認知症専門病院は保険診療が適用されますが通常の入院と同様、個室代、クリーニング代、食事代などが別途加算されます。厚労省と慶応義塾大学の研究(2014年)では認知症の入院費用は月額およそ34万円と試算されています。

 入院中は、認知症そのものの治療よりは、周辺症状の安定化、嚥下能力や着替えなど生活能力を落とさないように、運動をはじめとしたリハビリを行います。食事は認知症患者さんの病状に合わせて管理栄養士が献立を作ったり、また精神的な症状を落ち着かせるために薬を処方することもあります。認知症の完治は難しいですが、病院での治療継続、退院して在宅医療(訪問診療・看護)という選択をすることも可能です。

▽武井智昭(たけい・ともあき) 2002年、慶応義塾大学医学部卒業。さまざまな病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として研鑽を積んでいる。

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