迷ってしまったり、うまく物事が進まなかったりするときは、あらかじめパターンを決めてしまうと有効です。ケアレスミスが命のやりとりに直結する病院では、手術前後のメスなどの器具をダブル/トリプルでチェックすることを絶対のルールにしています。
また、むしゃくしゃして暴飲暴食をしたくなる、ストレスがたまりすぎて散財したくなる……こうした誘惑に負けてしまいそうなときも、自分の中でパターンをつくっておくといいでしょう。
そこでお勧めしたいのが、「イフ・ゼン・プランニング」と呼ばれるセルフコントロール術です。これは、「もし(if)◯◯が起きたら、そのときは(then)××する」というルールをあらかじめ決めておくというものです。
たとえば、もしストレスがたまってカロリーの高い甘いものを食べたい!(if)となったら、その場でスクワットを10回しないといけない(then)と決める。もしイライラしてたばこを吸ってしまう(if)と感じたら、コップ1杯の水を一気飲みすることでブレーキをかける(then)。こんなあらがい難い誘惑に直面したときは、クールダウンさせるための台本をあらかじめ用意する──。それが「イフ・ゼン・プランニング」です。
コンスタンツ大学のアヒトジガーらは、94人の学生を対象に、「もし私が選んだ〇〇(高カロリーな食べもの)を食べたくなったら、そのことを忘れる!」と、3回唱えさせ、1週間後に、学生たちがどれくらいその食べものを食べたかを調べる実験(2008年)を行いました。
その結果、「イフ・ゼン・プランニング」を実践した被験者は、実践していない学生に比べ、消費量が半分近くまで減っていたといいます。
また、107人のテニス選手を対象にした実験では、試合の当日に、次の3つのグループに分け、試合後、本人やトレーナー、チームメートにパフォーマンスなどを評価してもらいました。【グループ1】「試合に勝つために一球入魂でプレーをする」と目標を書いた紙に下線を引かせて署名してもらったグループ。【グループ2】同じ目標を目指した上で「イフ・ゼン・プランニング」をしたグループ(たとえば、「集中力が足りない」などネガティブな気持ちが起こったら「落ち着くようにする」など)。【グループ3】何もしないグループ。
すると、【グループ2】の「イフ・ゼン・プランニング」をしたグループの評価が劇的に良かったというのです。「イフ・ゼン・プランニング」は、前頭前皮質に機能障害をきたしている患者にも有効ともいわれています。「絶対にそうする」というパターンを決めてしまえば、脳や体はスムーズにアクションしやすくなります。仕事においては、「もし〇〇をやるときは、必ずここを注意して、終わったあともここをチェックする」というように、(then)を決めておくと、よく起こりがちなミスを回避しやすくなったり、ストレスを回避しやすくなったりします。意識的にパターンをつくると◎ですよ。
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