CESといえば毎年ラスベガスで開催されるテクノロジーの祭典。今年はパンデミック明け初の開催で、パナソニックやSamsungなどグローバル企業からスタートアップまで、世界中から3000社10万人が結集しました。
EV(電気自動車)、家電、メタバースまで、華やかな最新のイノベーションに注目が集まる中、全体を貫くテーマは意外にも「ヒューマン・セキュリティ・フォー・オール(世界の全ての人の安全)」。一体どういう意味でしょうか。筆者の取材を元にレポート、分析します。
CESを主催するCTA(全米民生技術協会)のゲイリー・シャピロCEOは、基調講演でこう語りました。
「戦争、災害、貧困、病気、不景気。世界は脅威に満ち、人類の安定と発展を妨げている」
そして、温暖化による食糧不安、世界の20億人が清潔な水を飲めない、多くが必要な医療が受けられないなどの現実を挙げ、「我々は国境を越え、イノベーションによって、全人類の基本的人権を守るために力を合わせるべきだ。」と宣言。
特に注目すべきなのは、今回使われた「人権」という言葉。もう聞き慣れた「サステナビリティ」が地球や自然を守るイメージが強いのに比べ、人間を中心にした考え方にシフトすることで、これまで以上に緊急性を前面に押し出した感があります。
世界はコロナのパンデミックを同時に体験し、医療などの基本的な権利が守られていない人が、どれほど多いかを知るようになりました。特にこうした状況に敏感はアメリカの若い消費者からは、人権に真剣に取り組む企業が支持されるという傾向も、ますます強くなっています。
この潮流の中で、CESで実際にどんな商品やビジネスが注目されたのか、ヘルステック、フードテックを中心に次回お伝えします。
ニューヨークからお届けします。