カリウムの取りすぎに要注意! 野菜、果物、豆…「体にいいもの」を食べているのにナゼ

体にいいと思っていても…
体にいいと思っていても…(C)日刊ゲンダイ

■腎機能低下と高カリウム血症

 まずは、次の問いをチェックしてもらいたい。

・野菜や果物をよく食べる
・芋や豆類をよく食べる
・海藻類をよく食べる
・納豆をよく食べる
・緑茶をよく飲む


 一見、体に良さそうな食生活だが、もしかしたらカリウムの取りすぎになっているかもしれない。東京医大病院腎臓内科主任教授の菅野義彦医師に聞いた。

 カリウムは、細胞の浸透圧の維持、心臓機能や筋肉の調節、神経刺激の伝達などの働きを担うミネラル。一般的によく知られるのは、「塩分(ナトリウム)の排泄を促す」だろう。

「ところが、カリウムは血中濃度の正常域は4~5.4と範囲が狭く、ほんの小さな変化が体に影響を与えます。カリウムの血中濃度が5.5以上になると高カリウム血症と診断されます」

 症状は、最初は手足の末端の痺れ。左右両方に出る。そのうち、指先から腕、足先から太もも、と痺れが体の中心部に近づいていく。

「そして心筋(心臓の筋肉)の痺れである致死的な不整脈が起こります」

 救急搬送されてきたある患者は、カリウムが9.8という高値に達し、心電図では脈拍の間がどんどん開き、「このままいけば数十分持たずに心停止」という状態。急ぎ透析治療でカリウムを抜き、助かった。

 カリウムは尿や便とともに排出される。つまりカリウムの血中濃度の上昇は、排出能力の低下と摂取量の増加が関係して起こる。慢性腎臓病(CKD)による腎機能低下(排泄能力低下)、排泄能力が低下する薬剤の服用、食品やサプリメントによるカリウムの取り過ぎ(摂取量の増加)が主な原因だ。

 問題は、カリウムをどれくらい摂取しているか、把握しづらいこと。

「一般的な食品表示には、カリウムの含有量は書かれていません」

 また、カリウムは味がない。体にいいと思われている野菜や果物、芋、豆類、海藻類、納豆、緑茶に豊富で、肉や魚にも多い。知らないうちにたくさん摂取している可能性がある。

「カリウムの血中濃度はルーティンでは測定しません。意識していないと、自分のカリウムの血中濃度を知るチャンスはほぼ生まれません」

■高齢者は、一度は血中濃度の測定を

 前述の通り、CKDで腎機能が低下しているとカリウムの排泄能力が低下する。CKDの人は、まずはカリウムの血中濃度を測定し、必要に応じて主治医や管理栄養士らと食事内容を見直す。

 一方、CKDでなくても安心はできない。腎機能のポピュラーな評価項目であるクレアチニンは、腎機能が半分程度まで低下しないと高い数値を示さない。そのため最近は、クレアチニン、年齢、性別を特殊な計算式にあてはめ算出する「eGFR」という数値が用いられるが、すべての人がeGFRで正しく評価されているとは限らない。

「クレアチニンは正常でも、腎機能が落ちているかもしれない。加齢で知らずに腎機能が落ちていることもあります」

 そういう人がカリウムが豊富な食品を「体にいいから」と積極的に食べていたら……。過去にカリウムの血中濃度を測定したことがなければ、一度は測定することをお勧めする。一般内科でも、希望すれば測定してもらえる。

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▽高カリウム血症と低カリウム血症

 カリウムの血中濃度が低すぎても、低カリウム血症を起こす。高カリウム血症も低カリウム血症も健康な人が普通の食生活を送っていればそう起こるものではないものの、超高齢社会でCKD患者や、CKDまでいかなくても腎機能が低下している人が増えているため、高カリウム血症に注目が集まっている。

 カリウムの血中濃度を下げるには薬物療法もあるが、基本は食事内容の見直し。一番重要なのはカリウムが多い食品を知ることで、料理を撮影すればAIがすぐにカリウム量を測定してくれるスマホのアプリも登場している。

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