ヒトメタニューモウイルスは、小児を中心とした急性呼吸器感染症のウイルスのひとつです。1~3歳の幼児の間で流行するケースが多いのですが、大人にも感染します。
初感染は生後6カ月ごろから始まり、2歳までに約半数、遅くとも10歳までにほぼ全員が1回は感染します。小児の呼吸器感染症の5~10%、大人の呼吸器感染症の2~4%は、ヒトメタニューモウイルスが原因だと考えられています。
ヒトメタニューモウイルス感染症は春先に流行することが知られていて例年1月あたりから報告件数が上昇し、3~4月にピークを迎えます。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと同じく飛沫や接触により感染し、4~6日の潜伏期間の後に発症します。
いわゆる風邪症状、咳、鼻水、発熱などが主症状です。通常、1週間程度で症状は治まりますが、乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。多くの人は何度も繰り返し感染してしまいますが、年齢が上がるにつれて徐々に免疫がつき、症状が軽くなる傾向にあります。
ヒトメタニューモウイルス感染症は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスとは異なり、ワクチンや抗ウイルス薬がなく、重症度に応じた対症療法を行います。
また、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと同様に抗原検査キットによる迅速診断が可能で、鼻咽頭を細い綿棒でぬぐった後、3~15分程度で診断されます。
確定診断ができても治療薬がないのだから意味ないじゃないかと思われるかもしれませんが、原因ウイルスを特定することにより、不安を解消できますし、家庭内や保育施設などでの流行を把握することができます。また、何より「ウイルス感染」であるとわかれば、不要な抗菌薬の使用を避けることにつながるのです。
感染症別 正しいクスリの使い方