科学が証明!ストレス解消法

健康のための万能薬「マイオカイン」はスクワットで増やす

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 厳しい寒さが続きますが、もう少しすれば待ち望んだ春が訪れます。春になると外に出かけたくなりますし、新しいことを始めたいという気持ちも芽生えてくるでしょう。そのためにも健康な体が不可欠となるわけですが、この時期に健康診断を受ける方も多いのではないでしょうか。

 年々、体力の衰えを感じ、物忘れもひどくなり、集中力も続かない……どんどん老化を身に染みて感じてしまうだけに、健康診断の結果が怖い──。その気持ち、とてもわかります。

「健康のための万能薬はないものか?」、思わずそんな夢みたいなことをつぶやいてしまいそうになりますが、もしかしたら今後、そういった可能性を秘めているかもしれないといわれているのが、「マイオカイン」です。

 マイオカインとは、ギリシャ語のmyo(筋)とkine(作動物質)を組み合わせて作られた造語で、コペンハーゲン大学のペダーセンが名付けた、運動したときに筋肉から作られる物質のことです。

 聞き慣れない方も多いと思いますが、マイオカインはアメリカ国立老化研究所やルイジアナ州立大学など多くの機関が研究を行っていて、うつや不安の抑制、糖尿病、認知症、脳卒中、動脈硬化、心疾患、エイジングなど、さまざまな生理機能に影響を与える可能性のある物質として、国内外で大注目を集めている物質です。

 では、どのようにしてマイオカインは人間の体で作られるのか? 下半身、特に太ももやふくらはぎの運動が大切だといわれています。マイオカインは新しい筋肉を作るときのみに分泌されるといわれており、出来上がってしまっている筋肉を鍛えても、その効果は期待できないそうです。地球上の金の埋蔵量は決まっている、そんなイメージを抱いていただくとわかりやすいかもしれませんね。

 とは言っても、普通の人はなかなか下半身や太ももの筋肉を重点的に鍛える機会は少ないと思います。そのため、簡単なところではスクワットをするだけでも有効とのことです。

 また、あくまでマウスを使った実験ですが、首都大学東京(現・東京都立大学)の藤井らは、定期的な運動をしている場合としていない場合に、マイオカインの分泌がどう違うかを検証しています(2013年)。

 1日1時間、週に5日、12週間ほど運動させたマウスは、運動していないマウスに比べ、2倍前後のインスリン(糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持つ)の分泌量の増加が見られたそうです。

 また、ルイジアナ州立大学のコヴィントンらは、20人の健康な男性を対象に、エアロバイクをこいで650キロカロリーほど消費させる実験(2016年)を行いました。運動の前後に、太もも前部の外側にある外側広筋の組織を調べたところ、筋肉量の増加とともに、造血や免疫反応、組織の線維化などに関連するマイオカインが、8倍から25倍の増加が見られたといいます。

 まだまだ研究の余地が残されているマイオカインですが、注視しておくといいでしょう。少なくとも、日課として30回程度のスクワットをすると◎ですよ。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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