帯状疱疹の疑いも…ワクチン接種1カ月後のピリピリした違和感には要注意

大規模接種会場へ向かう人たち
大規模接種会場へ向かう人たち(C)日刊ゲンダイ

 米国でワクチン接種率とコロナによる死亡率を比較した研究では、接種率が高い州では死亡率が低かった。ワクチン接種を検討している人は参考にしたい研究結果だが、頻回のワクチン接種は、帯状疱疹などのリスクを上げるかもしれない、との指摘もある。

「JAMA Network Open」誌の昨年11月16日号に掲載された発表では、コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加は関連していないことが示唆されている。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者らが、ワクチン接種と帯状疱疹リスクを検討した結果だ。

 ただ、記者が取材する中で「ワクチン接種が進んできた頃から帯状疱疹患者が増えてきた印象」という話を時々聞く。

「私も、ワクチン接種後に帯状疱疹を起こした患者さんを複数例診察しています」

 こう話すのは、東京女子医大脳神経外科客員教授の清水俊彦医師。頭痛外来を担当しており、片頭痛や群発頭痛が帯状疱疹ウイルスと関連していることに着目し、研究・診療を行っている。

 ある女性は、3回目のコロナワクチン接種2カ月後、右耳に針で刺すような痛み、右半分の顔面にピリピリするような違和感が生じた。

 耳鼻科を受診したが、耳孔には異常なし。軽い中耳炎と診断され、抗生剤とビタミン剤を処方されたものの、服用していいか悩み、既知の清水医師に相談してきた。

「頭部MRIでは脳内や中耳の副鼻腔に異常なし。耳孔も確かに異常なしでした。採血検査では、細菌性の炎症反応もありませんでした」

「顔の半分」「針で刺すような痛み」「ピリピリするような違和感」という症状からは帯状疱疹が疑わしい。しかし帯状疱疹ウイルスの抗体検査の結果判定には4、5日を要する。

 一方、耳鼻科から処方された抗生剤を服用すると、帯状疱疹であれば、逆にウイルスの活性を助長してしまう可能性がある。

「画像診断や採血の結果から、消去法で帯状疱疹ウイルスの再活性化しか考えられませんでした。抗ウイルス薬の点滴と経口剤の投与を開始したところ、翌日には帯状疱疹が数個出現。ただ、抗ウイルス薬の投与が早かったため皮疹はひどくならず、痛みや違和感といった神経痛は1週間ほどで消失しました」

■皮疹が出る前に抗ウイルス薬

 帯状疱疹は、子供の頃に感染した水痘ウイルス(水疱瘡のウイルス)が、水疱瘡が治った後も帯状疱疹ウイルスとなって体内の神経節に潜在し、なんらかの原因で免疫力が低下した際や免疫のバランスが崩れた際に再活性化し、発症する。

 症状は前述の通り、体の片側の神経痛、ピリピリした違和感から始まり、その1週間後くらいに皮疹が出現する。

「免疫の中で大きな役割を担っているのが免疫グロブリンです。頻回のワクチン接種でコロナに対する免疫グロブリンは増加し、罹患率や重症率は減少しますが、他のウイルスへの免疫力は相対的に低下する可能性がある。となると、コロナ以外の感染症に罹患する機会が増えることが考えられ、その代表的なものが帯状疱疹なのです」

 コロナウイルスを抑える力が増大するのに反比例して、これまで神経節に潜む帯状疱疹ウイルスを抑えていた力が弱まる。結果、帯状疱疹を発症しやすくなる──。

「ワクチン接種後、免疫グロブリンは1~2カ月かけて徐々に増加します。つまり、コロナ以外のウイルスへの免疫力が弱まるとしたら、ワクチン接種後1~2カ月してから。帯状疱疹をはじめとする別の感染症への注意を怠ってはいけません」

「帯状疱疹=皮疹」と考えられがちだが、疑う症状があれば、皮疹の有無に関係なく、速やかな抗ウイルス薬の投与が望ましい。治療が遅れて悪化すると、帯状疱疹後神経痛という後遺症が出現するリスクが高くなるからだ。皮疹が治った後も、時に衣服が触れるだけでも耐え難い痛みが続く。

 もしや、と思ったら帯状疱疹に詳しい医師のもとへ。そしてワクチン接種後は、数カ月先まで、免疫力が落ちない生活を意識して送るべきだ。

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