皆さんは、壁に目標などを張り、自らを鼓舞した経験をお持ちでしょうか?
受験生が目の付くところに、「〇〇大学に絶対に合格する!」とか、太り気味の方がトイレの扉に「△キロのダイエットに成功する!」という具合に、目標や夢を掲示する──。果たして、それは「やる気」を向上させるような効果があることなのでしょうか。
ユトレヒト大学のアーツらは、次のような実験(2008年)を行っています。アーツらは、42人の大学生を3つのグループに分け、パソコンの画面上に「握れ」と表示されたら3.5秒グリップを握ってもらうというアクションを行ってもらいました。その上で、握るアクションの前に、グループごとに以下のような言葉を見せたそうです。
【グループA】
「よい」や「快適」などのポジティブな言葉と、それとは関係ない「さらに」や「周辺の」などのポジティブでもネガティブでもない中立的な言葉を見せる。つまり、<ポジティブな言葉+中立的な言葉>を見せた。
【グループB】
ポジティブでもネガティブでもない中立的な言葉、および「努力」や「活発」のような努力に関する言葉を、ポジティブな言葉とはリンクさせずにサブリミナルで見せる。つまり、<中立的な言葉+努力に関する言葉>を見せた。
【グループC】
ポジティブでもネガティブでもない中立的な言葉、および努力に関する言葉を、ポジティブな言葉とリンクさせてサブリミナルで見せる。つまり、<中立的な言葉+努力に関する言葉+ポジティブな言葉>を見せた。
その結果、C→B→Aの順番で反応時間も、握る力がマックスの力に達する時間も早くなったそうです。ここからわかるのは、努力に関する言葉を一時的でも見ることで、人はモチベーションが上がる。そして、ポジティブな言葉と組み合わさるとより効果的だということが示唆されたのです。壁に目標を張る行為には、やる気を向上させる効果がある。これが、科学的にみても実証されたというわけです。
ポイントは、具体的に努力に関する言葉を張っておく点。たとえば、「成果が出ていて点数が上がっている」「節制の結果、体重が落ちている」などの自分の努力を再確認できるような言葉も掲げておけば、より効果的です。
また、「やっぱりダメかもしれない」など、過度なネガティブさは控えたほうがよさそうです。ミシガン大学のフレドリクソンは、否定的な表現をするごとに、少なくとも3つの肯定的な思考や感情をつくり出さないといけないと話しています。もしあなたが、「なんて自分はできないんだろう」という具合にネガティブな思考を抱いたら、3回ポジティブな考えを持たないと釣り合わない──。それほどネガティブな反応は、自分の中で大きな存在になると牽制しているのです。
そのためにも、目に入るところに自らを奮い立たせるような目標や努力を掲げておくのは素晴らしい対策といえそうです。目標を壁に張り付けてみる。ぜひお試しを。
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