厚労省による国民生活基礎調査(2019年)によると、腰痛の自覚症状がある人の率は男性で1位、女性で2位。そんな多くの人が抱える腰痛は、花粉症のシーズンに悪化しやすいから要注意だ。まだまだ寒くて筋肉が硬くなりがちである上、繰り返すくしゃみで腰に負担がかかる。そこで、腰痛のセルフケアとして「ツボ」を役立ててはどうか。本紙火曜日連載「東洋医学正しく知って不調改善」を担当する日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員の天野陽介氏に、知っておくべきツボを聞いた。
ツボなどに細い鍼を刺入したり、もぐさを置いて燃焼させたりする鍼灸は、腰痛の治療ガイドラインでも紹介されている。
「鍼となると専門家でないと難しいですが、ツボ押しやツボへのお灸は、一般の方がご自宅などで簡単に行えます。実際、ツボを使ってのセルフケアは紀元前から行われていたようです。慢性疾患である腰痛対策にぜひ活用してください」(天野さん=以下同)
■自宅で簡単、費用はほぼかからない
腰痛対策の代表的なツボが、背中にある「命門」「腎兪」「志室」だ。
いずれも、ウエストの一番細いくびれのライン上にある。くびれラインと背骨が交差するところにあるのが「命門(①)」、背骨から左右に指の腹2本分移動したところにあるのが「腎兪(②)」、背骨から左右に指の腹4本分移動したのが「志室(③)」。両手を腰に当てた時、親指が当たる場所にあるのが腎兪なので、その内側が命門、外側が志室と覚えるとわかりやすい。
花粉症シーズンは腰痛悪化シーズン…7つのツボで痛みを解消
背中のツボでさらに加えるなら、「腰陽関」「大腸兪」。これらはベルトを結ぶライン上にあるツボだ。ベルトラインと背骨が交差するところにあるのが「腰陽関(④)」、背骨から左右に指の腹2本分移動したところにあるのが「大腸兪(⑤)」。腰陽関は命門の、大腸兪は腎兪の、少し下あたりになる。
「あわせて、お腹側のツボも刺激することをお勧めします。『気海』と『関元』です」
「気海(⑥)」はおへそから親指の腹1.5本分下、「関元(⑦)」はおへそから指の腹4本分下にある。
刺激の加え方としては、腎兪、志室、大腸兪はツボ押し、またはツボ押し+お灸。
「ツボ押しは、息を吐きながら2~3秒かけて指をぐーっと押し込み、そのまま指の方向や力の加減を変えて気持ちいい場所、響く場所を探します。そして息を吸いながら、ゆっくりと指を戻す。アザができるほど強くやらないようにしてください。特に決まった回数はありませんが、『ゆっくり押し、ゆっくり戻す』を何度か繰り返すといいでしょう」
押してくれる人がいる場合は、うつぶせになってリラックスした状態で、だれかに押してもらうのもいい。
前述の3つ以外は、お灸を。市販品を活用するといい。
「熱さのグレードがいくつか分かれているので、お灸に慣れていない方は、最もマイルドなものから試してください、ご自分でやる時のポイントとしては、熱いのを我慢しすぎないこと。特に背中のツボは目に見えませんから、熱いのを我慢しすぎて水膨れになってしまうこともあります。症状が強い場合、お灸を毎日やり、あとは予防の意味も含めてツボ押しを気持ちいいと感じる範囲で毎日やるといいでしょう」
くしゃみをした途端、ぎっくり腰……。そんなふうにならないためにも、ツボを日常に取り入れよう。