視力検査は問題なしでも「緑内障」に…早期発見には眼圧・眼底検査が必須

眼圧検査機
眼圧検査機(C)日刊ゲンダイ

 3月12日から18日は世界緑内障週間だ。これに合わせて日本緑内障学会は、緑内障の認知と啓発に向けて、日本各地のランドマークや医療施設などをグリーンにライトアップする「ライトアップinグリーン運動」を展開している。昨年まで実行委員長を務めた「たじみ岩瀬眼科」(岐阜県多治見市)の岩瀬愛子院長に、緑内障について知っておくべきことを聞いた。

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 えっ、まさか私が!?──。緑内障との診断で、こんな反応が非常に多いという。

「みなさん、自分が緑内障になるとはまったく思っていないのです。続けて口にされるのは、『視力検査では毎年合格だったのに』や『自動車の免許更新は問題なしだったのに』。『知人が白内障手術でよく見えるようになったと言っていた。手術で治りますよね?』とおっしゃる方もいます。しかしすべて間違った緑内障の認識なのです」

 緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経に障害が起こり、視野が欠ける病気だ。治療が遅れれば失明に至る。

 少しでも正常に近い視野を維持したければ、早期に発見し、点眼薬などの治療で視野欠損がそれ以上進まないようにするしかない。しかし間違った認識により早期発見につながらず、かなり進行してから発見される人が後を絶たない。緑内障は日本人の視覚障害原因疾患の第1位になる。

「緑内障で視野欠損はあっても、初期や中期では見ようとするところは見える。だから視力検査ではわかりません。むしろ『自分は視力がいい』と思っている方もいます。また、緑内障は両方の目に起こることが一般的ですが、症状の進行スピードが異なるので、一方の目でもう一方の目の不具合をカバーしてしまい、自覚しづらい」

 白内障と混同されている点もある。白内障は目の中のレンズの役割をする水晶体が白く濁る病気で、手術で水晶体を除き、人工の眼内レンズに換えれば「見えやすさ」を取り戻せる。しかし緑内障は視神経が障害される病気で、障害された部分は元に戻らないので、失った視野は取り戻せない。

■40歳を越えたら3~5年に1度は眼科検診を

「緑内障の早期発見には、眼科検診が必須です。自覚症状に頼っていては早期発見はほぼ不可能ですし、セルフチェック法もあるにはあるものの、限界があります」

 眼科検診では、眼圧、眼底検査が含まれているか確認を。視野検査も行われていたらベストだ。職場検診では視力検査のみが義務になっており、眼圧、眼底検査が行われていないところもある。それでは緑内障の疑いがあるかどうかはわからず、冒頭のように「視力検査では毎年合格だったのに」となりかねない。自治体や診療所の検診であれば、眼圧、眼底検査が大抵入っている。

 緑内障は加齢とともに発症リスクが高まる。40歳以上は20人に1人が緑内障というデータがあるので、40歳を越えたら最低でも3~5年に1度は眼科検診を受ける。

「ただし、過去に一度でも『緑内障の疑いあり』と指摘された方は1年に1回、眼科検診を受けてください。よくあるのが、『検診で疑いありと言われたので精密検査を受けた。すると異常なしだった。だから私は、緑内障は大丈夫』と、そのまま何年も検診を受けない方。精密検査では異常なし、あるいは緑内障とまでは診断できない状態であっても、次の検査結果はどうなるかわからないのです」

「眼圧が高い」「家族に緑内障がいる」「強度近視」「目にボールをぶつけたことがある、あるいは目を強く打撲したことがある」「検診で視神経乳頭陥凹拡大を指摘された」に該当する人も、緑内障になるリスクが高い。1年に1回の眼科検診を受けるべきだ。

「緑内障は高齢者に限った病気ではなく、40歳以上ならだれがなってもおかしくない。そして、確かに進行すれば失明に至る病気ではあるものの、早期に治療を開始し、継続すれば生活の質を落とさずに済むのです。そのチャンスを逃さないでほしい」

 眼科検診がまだの人は、すぐに予約をしよう。

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