時間栄養学と旬の食材

【豚肉】疲労回復に不可欠なビタミンB1や不飽和脂肪酸が豊富

1日に80~100グラムが適量
1日に80~100グラムが適量

 豚肉はイノシシ科の野生動物を家畜化した豚を食用に加工したものです。古来、野生のイノシシを食用対象とする文化が中国、エジプト、ギリシャなどで始まっており、日本でも縄文・弥生時代からイノシシの肉が食用とされていたそうです。沖縄地方や鹿児島、長崎では豚肉を食用とする文化が比較的早くに広がり、明治時代中盤には日本全国で豚肉の普及が始まっていきました。

 日本の豚肉は本種を掛け合わせて改良されているものがとても多いのが特徴。黒豚、阿波ポーク、きなこ豚といった銘柄やブランド名がついていますよね。鶏肉や牛肉に関しては国産牛や地鶏と呼ぶために食肉協会や国が定める基準があるのに対し、豚肉には定義がないのです。各地域の協会によって、同じ品種でも飼料や育つ環境を変え育てた銘柄豚を査定するため、その種類がたくさんになったと考えられています。わずかな量とはいえ、日本からシンガポールや香港などへも輸出されているんですよ!

 そんな豚肉に豊富な栄養素は何といっても良質なタンパク質ですが、それ以外にも注目すべき栄養素がたくさん含まれています。まずは、炭水化物に含まれる糖質からエネルギーを作り出す時に欠かすことのできないビタミンB1。鶏肉や牛肉などの他の肉類と比べても5~10倍多く、疲労回復に欠かせない栄養素のひとつともいわれています。減量中で炭水化物を控えた場合にも効率よくエネルギーを作り出してくれるため、アスリートなどにもよく必要とされる栄養素でもあります。

 また、豚肉は牛肉などと比較して、取ってほしいと推奨されている不飽和脂肪酸の量が比較的多いのも特徴です。部位や種類にもよりますが、日本食肉消費総合センターのデータによると豚肉の不飽和脂肪酸は脂肪酸全体の約50%を占め、そのうち約80%がオレイン酸であることが分かっています。一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は、オリーブオイルにも含まれる脂肪酸で、悪玉コレステロールの低下作用が認められています。

 とはいえ、どんなに良い食材だとしても食べすぎは厳禁! 一般的な成人の場合、1日に食べる量を80~100グラム程度にすると過剰摂取を防ぐことができます。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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