科学が証明!ストレス解消法

1日を24時間以上に延ばす方法 「脳時間」をコントロール

1日が30時間に増えたらいいのに…
1日が30時間に増えたらいいのに…

 仕事に追われている時、誰もがこんなふうに思った経験があるのではないでしょうか? 1日が24時間ではなく、30時間に増えたらいいのに!

 もちろん、時間を引き延ばす科学的な方法などあるわけはないのですが、ベイラー医科大学のパリヤデスとイーグルマンは、「脳の仕組みを知れば、1日を24時間以上に延ばせられる」という研究結果を発表(2007年)しています。

 と言っても、魔法のように実際に時間を延ばせるわけではありません。この研究者らは、「脳は新しい情報をたくさん受け取ると、処理するためにいつもより時間がかかるため、時間が長くなったように感じる」と指摘しています。

 逆に、夢中になっていたり、集中していたりすると、アッという間に時間が経ってしまいます。たとえば、同じ帰り道でも、友人と話しながら帰る家路は、時間が早く感じるでしょう。つまり、時間を長く感じる、短く感じることは、脳の知覚に対する処理能力の速さと関係しているというわけです。研究者は、この「脳時間」の把握によって、時間を長く感じられるようになると提唱しています。

 実験では、コンピューターの画面に茶色の靴の画像と、花の画像を映し出し、被験者に見てもらいました。その上で、時間の大半は靴の画像が映し出され、時折、花の画像が映るといった配分で見せたといいます。

 その結果、被験者のほとんどが、「花の画像の方が、靴の画像よりも画面に表示されている時間が長いと感じた」と回答したのですが、実はどちらも表示時間(例えば2秒間)は一緒でした。それにもかかわらず差が生じたのは、「画像を見るときの注意力の差によってもたらされた」と説明しています。

 靴は何度も現れるため数回目には印象に残らなくなってしまった。一方で、たまにしか現れない花は新鮮ゆえに、脳の処理速度が遅くなり、画面に長くとどまっているように見えた──。

 これに近い現象が、年を重ねるにつれ、1年が早く感じるという感覚です。小学生の頃の1年間はとても長く感じたのに、大人になって社会活動を送るようになると、アッという間に時が流れていくように感じますよね。

 先の実験に倣うなら、自分の日常の中にいかにして「花の画像」を差し込んでいくか、が大事。無理のない程度に新しいことを知ったり、学んだり、始めたりすれば、脳時間を長く延ばせる。つまり、通り過ぎるような1日ではなく、長く感じられるような1日を過ごせるようになる。新しい情報を与えることが、とても重要なのです。

 無理して「脳をフル回転!」させるのではなく、日頃からちょっとした新しい発見や好奇心を持つ。短く感じる脳は処理速度を速くすればいいわけですから、集中力を高めるためには、作業を簡略化、ルーティン化するといいでしょう。

「脳時間」をコントロールすることが、余裕のある1日をつくり出すのです。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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