「慢性腎臓病(CKD)になったら、腎がんになるんですよね」と患者さんから相談されたことがありますが、慢性腎臓病になったら腎がんになるわけではありません。
ただ、慢性腎臓病のステージが進み、透析になった場合は腎がんの発症率は上がるというデータはあります。透析患者さんは、そうでない人と比べると腎がん発症率が15倍ともいわれており、透析期間が長くなるほど発症率が上がるというデータもあります。
なぜ、透析患者さんの腎がん発症率は上がるのか──。その理由は、まだはっきりとわかっていません。いずれにしろ、発症率が上がることがわかっているのですから、早期発見につながる手を打つべきです。
初期の腎がんはほぼ無症状なので、自覚症状に頼っていると発見が遅れる可能性があります。そこで透析患者さんは、1~2年に1度の腎臓の超音波検査を受けることが推奨されています。また、男性の方が女性よりも腎がん発症率が高いため、要注意です。
慢性腎臓病=腎がんではない。ですが、慢性腎臓病も決して軽い病気ではありません。慢性腎臓病は特効薬がない病気。診断されたなら、生活習慣を改めるなどして、腎機能が現状より低下しないよう守っていくための治療を始めます。
具体的には「高血圧、糖尿病の治療」「腎機能低下の合併症の治療」「健康的な生活習慣を送る」「定期的な腎臓の観察」があります。
慢性腎臓病の患者さんは、高血圧や糖尿病を患っている人が非常に多い。私は「慢性腎臓病」と診断した場合には必ずこの2つの病気についても検査し、当てはまる患者さんには適切な薬を処方します。
高血圧や糖尿病の薬には、腎臓を保護する作用があり、人工透析になることを遅らせることが証明されている薬もあります。
次に「腎機能低下の合併症の治療」について。腎機能の低下が進行すると「動脈硬化」や「筋力低下」「腎性貧血」などが合併症として起きるリスクがある。そのため、定期的な通院で、これらを発症していないかどうかの確認が必要です。
「健康的な生活を送ること」については、この連載でも何度かお話ししたので、もう改めて説明することもないかもしれませんね。禁煙や肥満の解消、腎臓病によい運動療法(腎臓リハビリテーション)、十分な睡眠などが該当します。
最後に「定期的な腎臓の観察」ですが、腎機能の低下が進行しているかどうかを定期的にチェックすることはとても重要なこと。少なくとも数カ月に1度はeGFRの値と、尿タンパク定量を確認するようにしていただきたいです。
健康長寿のカギは腎臓にあり