ぬか漬けの材料は米ぬか、塩、水。混ぜ合わせて「ぬか床」を作り、そこで野菜を漬けた伝統的な漬物です。江戸時代、精米技術が発達して玄米から米ぬかを分離できるようになったことから、米ぬかを利用したぬか漬けが浸透してきたそうです。
ぬか床には乳酸菌と呼ばれる腸内環境を改善してくれる善玉菌が豊富に含まれています。乳酸菌はヨーグルトなどにも多く含まれているので有名ですね。ヨーグルトも発酵技術の進歩により、1ミリリットルあたり1000万個以上の乳酸菌が含まれている商品もありますが、ぬか漬けの乳酸菌はなんとその約10倍! 1グラムあたり1億個も含まれています。ただ、ぬか床は仕込みたての場合、乳酸菌が少ないのです。東海漬物のホームページ(漬物機能研究所の調査)によると、約10日たった頃から酸味が増す発酵中のぬか床で乳酸菌数が増えることが報告されています。
乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を改善する可能性があることもわかっています。腸内環境が良くなると、免疫力も高まり、アレルギー予防や整腸作用、疲労回復などの健康効果へつながるのでおすすめです。また、米ぬかに多く含まれるビタミンB1は野菜の中へ浸透するので、野菜のビタミンB1含有量が増加します。たとえば、漬け時間によっても違ってきますが、キュウリ1本(約100グラム)に含まれているビタミンB1が0.03ミリグラムなのに対し、ぬか漬けだと0.26ミリグラムと約10倍にも増えていくのです。
ビタミンB1以外にも栄養成分が豊富です。米ぬかには動脈硬化の原因となるコレステロールや、塩分を体外に排出させてくれる働きがあるGABAが多く含まれます。GABAは正常血圧には影響せず、高血圧に対してのみ血圧降下作用を発揮するということもわかっていますので、まさに高血圧の方にはうってつけの栄養素です。脳卒中を発症しやすいモデルラットに米ぬかをエサにプラスして与えた実験では、血圧や血糖値の数値の改善傾向が見られたことも報告されています。
またGABAはより良い睡眠を促してくれる働きもありますので、ぜひ夜に召し上がってみてください。
おいしいと感じる塩分濃度はぬか床の約5%。漬かり具合にもよりますが、キュウリのぬか漬け1本あたりの塩分が約1グラム程度になる量です。
時間栄養学と旬の食材