痛みスッキリ からだ楽チン

MRIでは異常がみつからない…造影MRIでより詳しく検査を

写真はイメージ
写真はイメージ

 肩関節にある唇のような組織、「関節唇(かんせつしん)」が損傷し、痛みが生じる病気が関節唇損傷です。造影剤を使わないMRIばかり受けていたために、この肩関節唇が何年にもわたって診断がつかなかったケースは珍しくありません。具体的な例を紹介します。

 その患者さんは自転車で走行中、自動車に後ろから追突され、自転車と車の接触で地面に叩きつけられました。救急搬送された病院ではレントゲン検査の結果、骨折などはなし。しかし交通事故から何日かたっても左肩の痛みが続くため、改めて整形外科外来を受診。肩のMRIやCTを受けましたが、異常なしという理由で経過観察となりました。

 それからも肩の痛みは一向に良くならず、整形外科をいくつか受診したもののいずれも異常なしで、肩関節の専門外来の受診に至った時は、交通事故から数年がたっていました。

 そこで初めて受けたのが、冒頭で触れた造影剤を使ったMRI(造影MRI)です。造影剤を使わないMRIより詳しく検査ができるのが特徴。結果、肩関節唇損傷と診断されました。

 その方は手術での完治を希望し、関節鏡手術を受けました。関節鏡手術とは関節の中に内視鏡を挿入し、モニター越しで体の内部を観察しながら手術を行います。関節唇損傷はモニターで映っており、その損傷は記録装置で録画をしておきました。

 術後は日常生活に問題ないレベルまで回復されましたが、この方には気がかりなことが残りました。肩関節唇損傷が今回の交通事故で発症したものと証明できないために、保険会社の交通事故外傷という認定が受けられなかったことです。

 読者の皆さんは、「肩関節唇損傷という病気がある。そしてその病気はMRIで異常がみつからないと言われても造影MRI検査で肩関節唇損傷だと診断されるケースがある」ということを知っておいてください。

森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

関連記事