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どんな体型も容認する「ボディ・ポジティブ」は肥満の奨励ではない

写真はイメージ(C)iStock
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「ボディ・ポジティブ」という言葉がここ数年注目されています。

 体格や体型、肌の色、性別、身体能力などに関係なく、すべての「体」を受け入れることを推進する運動です。

 このムーブメントは特にファッションを中心とした消費に影響を与えています。多くのブランドがサイズの種類を増やし、広告やファッションショーに、プラスサイズのモデルが登場するのは当たり前になりつつあります。

 ところがここで出てくるのが、アメリカ人の肥満の問題です。7割が太り過ぎで4割が肥満症のアメリカでは、「ボディ・ポジティブ」は、肥満を礼さんしているのではないかという批判も珍しくありません。

 しかしそれに対し「ボディ・ポジティブ」推進派はこう反論しています。

 自分の体型に関するネガティブなイメージは、摂食障害やうつなどのメンタルの症状を引き起こすことがわかっています。さらにソーシャルメディアやセルフィーの時代になり、その傾向はさらにエスカレートしていることも明らかです。

 そんな中、「ボディ・ポジティブ」は、太っていても痩せていても体型を他人と比べるのではなく、自分そのものを愛し大切にするセルフラブであり、健康でいるためのセルフケアの一貫でもあるのです。

 もう1つ「ボディ・ポジティブ」は若いZ世代の多様化とも繋がっています。彼らの半分は非白人で、さまざまな人種のルーツを持ち体型も体格もばらばら。そんな彼らは、サイズの種類が少なかったり、激痩せモデルだけを広告に使うブランドを支持しません。どんな体型でもサイズでもインクルーシブに扱われ、すべての人が「受け入れられている」と感じる「ボディ・ポジティブ社会」であることが、とても重要だからです。

 日本でもここ数年ダイバーシティが叫ばれていますが、服のサイズに関してはまだまだのようです。結果的にある一定のサイズ内に皆をはめ込むことになってしまっているし、自分に合ったサイズがない人が置いていかれているのも、ちょっと残念です。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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