高齢になると血圧が高めになり、降圧薬を服用している方もたくさんいらっしゃるでしょう。降圧薬は、その効き方によって多くの種類があります。ご自身が服用しているクスリの話も出てくると思いますので、参考になれば幸いです。
筋肉が縮むためにはカルシウムが必要で、カルシウムがなければ筋肉は収縮することができません。なぜ、筋肉の話をしたかというと、血管も筋肉の力で収縮しているからです。一般的に筋肉というと腹筋や背筋といった目に見えるところを思い浮かべると思いますが、これらは骨格筋といいます。一方、血管を収縮させる筋肉のことを平滑筋といい、厳密には骨格筋とは異なりますが、いずれも収縮にはカルシウムが必要です。
「カルシウム拮抗薬」は、その名の通りカルシウムの働きを抑えることで血管平滑筋の収縮を抑制し、血管を広げて降圧効果を発揮します。カルシウム拮抗薬にはジヒドロピリジン系とそれ以外のものがありますが、降圧効果を目的に用いられるのはジヒドロピリジン系です。近年、ジェネリック医薬品が普及しクスリの成分名がそのまま商品名になっていることが多く、アムロジピンやニフェジピンなどのように「○○ジピン」という名前がついているクスリは、ほぼ間違いなくジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬になります。
副作用として、めまいやふらつきといった血圧が下がることで出てくる症状があります。そのため、車の運転や高所での作業には注意が必要です。また、頻脈が出るケースもあります。カルシウム拮抗薬は降圧効果が高いため、体が本能的に血圧を維持しようとして脈拍を上げるために生じます。クスリの成分によっては、むくみ(浮腫)を起こすこともあります。
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬にはもうひとつ注意点があります。それが、「グレープフルーツジュースとの間に相互作用がある」ことです。グレープフルーツに含まれる成分がクスリの分解を抑制し、降圧作用が強く出るだけでなく副作用のリスクも高くなるのです。あえて「ジュース」としたのは、市販されているグレープフルーツジュースは皮ごと搾っているうえ、さらに濃縮されているため、そういった成分の含有量が多くなってしまうからです。なお、この相互作用を受ける度合いはカルシウム拮抗薬の成分ごとに異なるので、一度ご自身の服用しているクスリの説明書を確認してみましょう。
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は、最も多く使用されている降圧薬のひとつです。自己判断で中止してしまうと急に血圧が上昇する場合もあるので、用法用量を守ってしっかり服用していきましょう。