トランプ元大統領が、賠償金6.8億円を命じられた民事訴訟は、原告のE・ジーン・キャロルさんが「トランプ氏から性的暴行と誹謗中傷を受けた」という申し立てが認められたのと同時に、「有害な男らしさ」の否定でもありました。
30年近く前に起きた事を証明するのは難しく、結局レイプは認められず、性的暴行にとどまりましたが、原告にとってはそれだけでも大きな勝利でした。
トランプ陣営側は、キャロルさんが自身の名声のために「完璧なレイプ犠牲者」になりすましていると攻撃。しかしキャロルさんの弁護団は、トランプ氏が常に豪語している「自分は有名人だから、女はいくらでも寄ってくる」という態度を逆手に取ったのです。
2016年大統領選直前に浮上した悪名高いビデオでトランプ氏は、「どんな女でも股間をつかむくらいならやらせてくれる」と発言しました。これに対し今回彼は「良くも悪くも当然のこと」と、重ねて正当化する証言をしたのです。これが「キャロルさんに対して、少なくとも性的虐待をしたことは十分考えられる」と、陪審員が判断する材料になりました。
アメリカではこうした男性の発言や行動が近年「有害な男らしさ」として、問題視されています。
有害な男らしさとは、男が身体的な強さを誇るだけでなく、性的な攻撃的な態度を取る、また女性を蔑んだりLGBTQを嫌悪することも含まれます。
一方、男らしくあるためには、感情を抑制すべきという考え方。例えば男の子は泣いてはいけない、感情を見せるのは女々しいと育て育てられた結果、出すべき感情を押し殺してしまう。そのためにメンタルを病んでしまうのも、男らしさを求めるあまりの害毒と考えられています。
また男性の多くが銃を持ちたがるのも、その1つとして考えることができます。有害な男らしさは、アメリカの多くの犯罪やメンタルの病気とも関係していると言う考え方が、近年高まるばかりです。
#metoo運動が定着し、男女というジェンダーの壁も崩れつつある中、「らしさ」にしがみつく価値観は、すでにほころび始めています。
ニューヨークからお届けします。