科学が証明!ストレス解消法

「暗記」はシチュエーションと結びつけて行うと効率がいい

何かと紐づけることで記憶を強化
何かと紐づけることで記憶を強化

 何かを覚えたり学んだりするインプットの時間が足りない──。「ドラえもん」に登場する“暗記パン”ではないですが、そんな魔法のようなインプット法を夢見たことがある人はたくさんいるのではないでしょうか?

 ひみつ道具とまではいかないものの、音を覚えたり、単語を覚えたりする場合であれば、実は睡眠学習は効き目があるといわれています。

 米ノースウエスタン大学の実験(2009年)では、被験者にピアノのメロディーの演奏方法を示した鍵盤の図解を2つ見せ、各旋律につき同じ時間だけ練習してもらいました。練習後、被験者は90分の仮眠。その際、練習した2つのメロディーのうち一方だけを4分間静かに流し続けたところ、その睡眠中に流したメロディーの方が、流していないメロディーよりも演奏できる被験者が4%多かったといいます。ただし、たった4%です。睡眠学習に期待しすぎてはいけないとも言え、あくまで基礎学習は必要です。

 実験を行ったリーバーによれば、「においもまた記憶の定着のきっかけとなる」と話しています。もしローズマリーの隣で、スペイン語の単語を覚えるとしましょう。その場合、ローズマリーの香りを感知すると、同時に覚えたスペイン語の単語も浮かびやすくなるというのです。このように、何かと紐づけることで記憶を強化しやすくなるテクニックがあるんですね。

 私自身、英単語を覚える際は、状況と言葉を結びつけて覚えていました。

 たとえば、家から駅に向かうまでに目にするものに英単語を重ねていく。それにより脳が活性化する導火線が、単線から、複線になる。単語帳で文字と文字を結び付けて思い出すより、状況からも思い出せるように別動線をつくっておく──こういった暗記術は、先に紹介した「におい」と同じ構造です。

 皆さんも、名前は思い出せないものの、人物の印象だけは思い出せるといった経験があるはずです。それこそ“ヒゲ眼鏡(さん)”とか“ぽっちゃり花柄(さん)”とか勝手にその人をラベリングすると覚えやすくなる。

 初対面のときに「鼻毛が出ていた」だけでも、その人を覚えやすくなるのは、記憶を呼び起こす動線が複数あるため忘れづらくなるわけです。

 ですから、語学を学習するなら、歯磨きやトイレなどルーティンのアクションにインプット作業を重ね合わせれば一石二鳥でしょう。その上でシンプルなものに関しては睡眠学習を取り入れてみるといいのではないでしょうか。

 ただし、米ハーバード大学の研究では「睡眠時間を6時間以上取ることが望ましい」と示しています。睡眠中に脳内で整理された情報が記憶として定着するには十分な睡眠時間を確保する必要があり、4~5時間の短時間睡眠では体内時計が崩れやすくなるとクギを刺しています。

 長い時間をかけてダラダラと勉強したり、徹夜をしてまでインプットしたりするのは逆効果。睡眠学習に期待する以上に、まずは自身の睡眠の質を見つめ直す。これも大事なプロセスであることをお忘れなく。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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