だからあなたの頭痛は治らない

「月10回以上、市販薬を飲んでいる」は明らかに飲みすぎ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、前々回と2回にわけて市販の頭痛薬の服用のコツをお伝えしてきました。「じゃあ、市販薬と病院で処方される薬はどう違うの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。今回は、病院で処方する頭痛薬についてお話ししたいと思います。

 私が「自分は慢性頭痛だ」と思っている方に、なるべく早く頭痛を専門に診る医療機関の受診をお勧めするのは、市販の頭痛薬の飲み過ぎを防ぐ意味もあります。月に10回以上、市販薬を飲んでいる──。それは明らかに「飲み過ぎ」で、依存症も心配されます。

 そうなる前にぜひ頭痛専門の医師の診察を受けてください。「近所の内科じゃダメ?」と思う方もいるかと思いますが、そういった場合は往々にして医師処方の痛み止めを処方されがちです。頭痛の根本的原因を解消していませんし、それでは市販薬を服用するのと変わりありません。

 頭痛を専門に診る病院で出される片頭痛解消の薬の代表例としては「トリプタン製剤」があり、これは市販薬にはありません。

 ではトリプタン製剤は、片頭痛にどのような作用があるのか。それは「片頭痛が起きた際に、異常に広がった脳血管の拡張、むくみを抑える」「脳血管の拡張によって刺激を受けた脳血管周囲の三叉神経に働いて、三叉神経からの神経炎上物質の放出を抑える」「脳幹部にある三叉神経の大もとの三叉神経枝にもある程度作用し、脳への痛みの情報伝達を遮断する」などがあります。なお、三叉神経とは、顔の感覚を脳に伝える神経のことです。

 ここまで読んで「じゃあ、かかりつけ医にトリプタンを処方してもらおう」と思われたかもしれません。

 そのかかりつけ医が片頭痛に詳しいなら問題ないのですが、そうでない場合は注意が必要。なぜなら、病院を受診しようと考えるほどの頭痛持ちの人は、鎮痛剤で長期間痛みをごまかし続けていて、脳の興奮性が非常に強くなっているからです。

 そのため、そういう人は脳が痛みを覚えてしまっており、トリプタンを飲んでも効果が薄い、もしくは服用頻度が多くなる傾向があります。そういったこともきちんと話せる医師に処方してもらうことが望ましいですし、本来ならCTスキャンもしくはMRI検査など画像検査や脳波検査もした方がいい。それほど頭痛治療というものは簡単なものではないのです。

 トリプタン製剤も、やはり服用のタイミングが大切。「異様なまぶしさの後に、突然、目の前にチカチカ光が出る」「生あくびが出る」「軽い吐き気がある」など、頭痛持ちの人なら自分の頭痛の予兆がわかっていると思うので、その予兆が出た際に服用する。それが重要です。

 飲むタイミングや、普段の生活習慣から頭痛を予防できる策など、しっかり説明できる片頭痛に詳しい医師のもとで、トリプタン製剤を処方してもらうようにしましょう。

清水俊彦

清水俊彦

東京女子医大脳神経外科客員教授。「汐留シティセンターセントラルクリニック」の頭痛外来には全国から患者が訪れる。

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