梅雨に悪化…不快で眠れない「むずむず脚症候群」を改善したい

写真はイメージ
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 夜、脚に違和感や不快感を感じて寝付けない──。そんな人は「むずむず脚症候群」かもしれない。日本人の30人に1人が発症するとされ、日中よりも夜間に脚の不快感が強まるのが特徴だ。湿度や気温が高くなると症状が悪化するので、これからの時期に備えて知っておきたい。「にわファミリークリニック」院長の丹羽潔氏に詳しく聞いた。

「むずむず脚症候群(RLS)」とは、医学的には「レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)」と呼ばれ、脚に不快感があって思わず脚を動かしたくなる病気だ。「むずむずする」「チクチク痛む」「だるい」「電気が流れている」など、不快感の表現は人によって異なる。活動的な日中に比べて安静にしている時間が長い夕方から夜間に強くなる特徴がある。その結果、なかなか寝付けない、寝ている途中で目が覚めるといった睡眠障害を引き起こす。

「RLS患者さんの80~85%は、睡眠中に脚が勝手にピクピク動く『周期性四肢運動障害』を合併します。パートナーや家族から寝相が悪いと指摘されたらRLSの可能性が高いと考えられます」

 RLSは、特定の原因がない「一次性」と、他の病気や服用している薬が原因となる「二次性」に分類される。

「近年、一次性の原因のひとつに神経伝達物質であるドーパミンの受容体異常が指摘されています。また、一次性の人の40%に家族歴がみられるので、近親者がRLSを発症している場合は注意が必要です」

 二次性の原因には、鉄欠乏性貧血や鉄不足が起こりやすい慢性腎不全や妊婦、パーキンソン病や膠原病のほか、抗うつ薬や抗ヒスタミン薬の長期服用が挙げられる。また、鉄を結合して貯蔵するタンパク質であるフェリチンの血清濃度の値が低いとRLSを発症させやすいという。

 RLSは60~70代に最も多く、加齢に伴って有病率は上昇する。男性より女性に発症しやすい傾向があるので、二次性の原因となる疾患がある人は気を付けたい。

「当院では年間約100人が新たにRLSの診断を受け、患者さんは未就学児~70代と幅広い。認知度の低さから皮膚炎やうつ病と誤診され、RLSの診断に10年かかった患者さんもいます。夜間に強い脚の不快感があれば、まずは脳神経内科を受診してください」

 RLSを放置すると、不快感から脚を強くかきむしり、静脈炎や蜂窩織炎といった感染症を起こすリスクがある。また、RLSから睡眠障害になってうつ病を発症するケースも少なくない。QOLを低下させないためにも早期の診断が大切だ。

「診断は基本的に鉄やフェリチンの血清濃度を診る血液検査のほか、問診で『4つの必須診断基準』にすべて当てはまればRLSと診断されます。重症度は自覚症状の強さや頻度をもとに分類されます」

 必須診断基準は次の4つ。①脚を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感覚が原因になって起こる②その異常感覚が安静状態で始まったり増悪する③運動(叩く、揉む、歩き回る)によって改善する④日中より夕方~夜間に増悪する。

 治療は基本的に鉄分の多い食事の指導や、原因疾患の治療から始める。症状がひどく日常生活に支障を来す中等度以上の場合、鉄剤やドーパミン受容体作動薬の処方が検討される。

「特に子供の場合、血液検査で鉄分の数値が正常でも鉄剤の服用で症状が改善しやすい。RLSの薬は大人用に作られていて副作用に関する十分なデータも小児ではありませんが、症状が強く親が許可した場合のみ薬を処方します」

■冷凍した缶飲料で直接冷やす

 また、不快感の症状は血流が良くなると悪化しやすいというから、日頃からアルコールやカプサイシンの摂取は控える必要がある。湿度や気温の高さも血流は促されやすい。梅雨から夏の時期は常に除湿機を稼働させて部屋の湿度を40~70%に保ち、除湿機がなければエアコンのドライ機能で部屋全体の湿度を下げておくと症状の悪化を防げるという。

「寝具にも気を配ってください。タオルケットに比べて羽毛布団は、敷布団との間の湿気を吸収するといった研究結果があります。可能であれば、夏場も薄い羽毛布団を使用すると中途覚醒を防げ、不眠の症状も改善されていきます」

 就寝中に不快感で目覚め、なかなか寝付けない場合には、脚を直接冷やすのが効果的だ。事前にコーヒーやお茶などのミニ缶飲料を2本冷凍しておき、寝る際に枕元へ缶を入れた洗面器とタオルを置いておく。目が覚めてしまったら缶をタオルで拭いて、寝た状態のままふくらはぎなどの下で缶を1分程度転がすと、皮膚温が低下して不快感が消える。

「不眠の症状から睡眠障害を疑い、自己判断で睡眠薬を服用すると、悪化して脚だけでなく腕や顔まで不快感が広がる危険性があります」

 就寝時、脚に思い当たる不快感があれば、早期に専門医を受診したい。

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