科学が証明!ストレス解消法

“先延ばしグセ”をなくすには「そうしたくなる」環境をつくればいい

写真はイメージ
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 どうすればやる気をつくれるのか? 人類の永遠のテーマのひとつと言っても過言ではないかもしれません。やる気が出ない背景に「明日やればいい」「急いでやったところであまり変わらない」など何かと先送りにしてしまう“先延ばしグセ”があります。

 実は、“先延ばしグセ”は世界中でさまざまな研究がなされ、研究対象として議論も盛んに行われています。世界中の人が「どうすれば先延ばしにせず、パッと動けるようになるんだろう」と考えていると思うと、国籍や人種に関係なく、やる気は永遠のテーマなんだと親近感を覚えてしまいます。多くの人が悩んでいると思うと、ちょっと心が軽くなるかもしれません。

 そもそも、“先延ばしグセ”とはいったい何なのでしょうか?

 一例ですが米ニューヨーク市立大学のラビンらの研究(2011年)では、要因を次の9つに分類しています。

 ①衝動性(悪い結果になるかもしれない行動を深く考えずにしてしまう)②セルフモニタリング(自分が他人からどう見られているかを気にする)③計画と整理④行動の切り替え⑤課題開始⑥課題の進捗の監視⑦感情のコントロール⑧ワーキングメモリー⑨一般的なきちょうめんさ。

 少し分かりづらいものもありますが、これら9つの制御・実行能力不足が“先延ばしグセ”と関係していると、この研究では主張しています。

 では、“先延ばしグセ”を解決する方法はあるのか? スウェーデンのストックホルム大学のローゼンタールとカールブリングは研究の結果、“先延ばしグセ”の改善策(2014年)を次のようにまとめています。

 ①すぐに得られる喜びや報酬がある②他の行動の選択肢を減らす③失敗への不安を取り除く──この3つが効果的だと、研究ではうたっています。

 たとえば、「明日中に資料を完成させなければいけない」という課題があった場合、ダラダラとし始めてしまう前に①②③を取り入れてみる。
<①すぐに得られる喜びや報酬がある>は、「資料を完成させたご褒美として、晩ご飯においしいお酒を飲む」と報酬を設定する。これは脳の報酬系を働かせて、やる気を入れる方法とも置き換えられます。
<②他の行動の選択肢を減らす>は、「資料作成に取りかかる」という状況のみをつくり出すために、ワーキングスペースに移動する、あるいはスマホの電源を切るなど、集中せざるを得ない環境にすること。
<③失敗への不安を取り除く>は、「上司に怒られたらイヤだな」といった不安によって後回しになっているなら、それを緩和する方法を事前に用意するのです。

 つまり、“先延ばしグセ”の改善策は「そうしたくなる」あるいは「そうせざるを得ない」という状況や環境をいかにしてつくり出せるかがポイントというわけです。「明日でいいや」と思ってしまったら、ぜひ①②③を思い出してみてください。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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