高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリを「ピルケース」に入れる場合はいくつも注意点がある

ピルケースにはリスクも
ピルケースにはリスクも(C)PIXTA

 薬剤師として働いていると、クスリを「ピルケース」に入れている患者さんを結構な頻度で見かけます。今は100円ショップなどでも手軽に購入することができますし、曜日や朝・昼・夕ごとに区切られているタイプもあります。さらには小さくて携帯性に優れたものなどいろいろな種類があって、便利ではあると思います。ただ、ピルケースにはリスクもあるということを理解していただきたいのです。

 ピルケースに錠剤やカプセルなどのクスリを入れる場合、ほぼ間違いなく1錠(カプセル)ずつに切り離す必要があります。切り離さなければまず収まりませんし、1回分ずつ入れたい場合がほとんどだからです。そうなると、PTPシートをハサミで切り離すことになり、結果として前回紹介したPTPシートの誤飲のリスクが生じてしまいます。また、ピルケースの中の仕切りが緩くなっていると、せっかくちゃんと入れたはずのクスリが別のコマに混入してしまう場合もあります。

 ですから、ご自身でピルケースにちゃんと入れたと思っても、服用する際には必ずいま一度内容を確認するようにしてください。服用する際には、間違いなくPTPシートから錠剤やカプセルを取り出してください。

 中には、PTPシートから錠剤やカプセルがすでに取り出された状態、つまり“裸”の状態のクスリをピルケースに入れている方もいらっしゃいます。PTPシートのままピルケースに入れるとかさばりますし、結局、服用するときにそこから錠剤やカプセルを取り出さなければならないため、そうしたくなる気持ちはとてもよくわかります。でも、これは絶対にやめていただきたいのです。

 ピルケースを見ていただくとすぐわかりますが、気密性がまったくありません。フタをしっかり閉めていたとしても、空気や水分、光を通してしまいます。クスリには使用期限が設定されていますが、これはPTPシートに入った状態での使用期限となります。つまり、空気や水分の影響を受けるピルケースの中に裸の状態で入れられているクスリは、使用期限内であっても成分が壊れてしまう可能性があるのです。特に吸湿性の高いクスリは、こういったリスクが高いということを理解しておいてください。

 さらに危惧されるのは、ピルケースの中にある裸の状態のクスリは空中を浮遊しているカビや細菌の影響も受けてしまう点です。見た目は変わりなかったとしても、じつはそういったもので汚染されている可能性もあります。実際、とても不衛生なピルケースの中に裸のクスリが入れられているケースも少なくありません。

 ピルケースは有用なツールなので、正しく使えるようになるといいですね。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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