時間栄養学と旬の食材

【ヘチマ】血圧上昇や脂肪蓄積を抑制し、快眠にも役立つ

近年、ヘチマの栄養価が注目されている
近年、ヘチマの栄養価が注目されている

 ヘチマは見た目がキュウリに似ていますが、成熟すると繊維が強くなり、たわしなどに使われます。江戸時代に日本へ伝わり、夏から秋にかけての季節に収穫が盛んに行われる野菜です。地域ごとに特色を持つ品種もあり、特産品として愛され続け、沖縄県では「ナーベラー」「ナーベナ」とも呼ばれ、ゴーヤーとともに代表的な食材として親しまれています。沖縄の伝統料理チャンプルーなどの料理にも使われ、トロトロした部分とシャキッとした食感が特徴でおいしいとされています。

 栄養面では、カリウムや葉酸などのミネラルが含まれています。特に葉酸は、妊娠初期に摂取すると胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減する効果があります。

 とはいえ、95%が水分で構成されているのでその栄養価も大したことはないとされていたのですが、近年、農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究においてヘチマの栄養価が注目されてきています。2020年度の報告書によると、マウスの実験にはなりますが、ヘチマを食べさせた場合の血圧上昇抑制効果や、肥満モデルマウスにおける腹腔内脂肪蓄積抑制作用と血清総コレステロール濃度低下作用が認められたことが報告されています。

 また、茹でる調理をすると含まれているGABAが溶け出してしまうため、蒸し調理の方が適していることも明らかになっています。

 面白いことに2日間真空包装するとGABA含量が増えていることから、「GABAへちま」としての機能性表示食品の開発も進んでいるそうです。GABAは夜取ることで快眠に役立つ栄養素。調理法を考えながら夜に喫食するのもおすすめですね。

 ほかにも、ヘチマから抽出されたサポニンという成分には、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を抑制する可能性が韓国の研究で報告されていて、今後さらに注目を集めていきそうな食材です。

 ヘチマに限らず、ズッキーニやキュウリなどウリ科の植物のヘタに近い部分にはククルビタシンという成分が少量含まれています。少量であれば毒性はないのですが、ごくまれにククルビタシンの含有量が多く、毒性があるものが出てきます。見た目ではわかりづらいので、一口食べて苦みや渋みが強ければ、もったいないと思わずに食べるのはやめてくださいね。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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