がんと向き合い生きていく

入院生活をきっかけにひどいイビキをかくようになって…

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は大学時代、リンパ節が腫れ、不明熱が続き、急性白血病が疑われましたが、幸い「伝染性単核症」というウイルス感染症で、それでも1カ月入院しました。

 この時、38度以上の発熱が2週間ほど続き、解熱はしましたが、その後はひどい咽頭炎や口内炎が起こり、口も開けなくなりました。口から食事が取れなくなり、鼻から管を入れての経鼻経管栄養となったのです。つまり、大きな注射器から管を通して流動食を鼻から入れたのです。

 この炎症が治った頃からではないかと思うのですが、「イビキ」をかくようになりました。特にお酒を飲んだ時がひどいようで、時々、呼吸が止まるとも言われるのです。

 大学を卒業して、医局に入ったその年の忘年会は温泉宿に1泊し、麻雀大会が行われました。ひとつの大広間に50人ほど泊まったのです。私は端の方の布団に横たわり、みんなが寝てしまうのを待つつもりでしたが、お酒も入っていて眠ってしまいました。案の定、翌朝に先輩から「おまえのイビキがうるさかった」と言われてしまいました。

 結婚後、妻の実家に泊まった時も深酒をして、翌朝、隣の部屋で寝ていた方から「ひどいイビキだった」と……。イビキは自分では分かりませんから、ずっと「すみません」と恐縮して過ごしてきました。

 私のイビキは、特に飲酒した時は無呼吸もあるらしく、ひどかったようです。また、口を開けて寝ることも多く、特に冬は口が乾いて、喉を傷め、風邪をひくと声が出なくなることは毎年のようにありました。

■症状がひどい人は受診したほうがいい

 10年ほど前、自宅近くに睡眠クリニックができたので診察に行ってみました。一晩入院して、睡眠中の呼吸状態や脳波などをチェックしたところ、睡眠中の酸素濃度が低くなることが分かり、私のような患者は「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれるようです。

 その後、「CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸療法)」をつけて寝るようになりました。エアチューブを接続した鼻マスクを装着し、機械で圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止するのです。機械にSDカードが付属していて、空気圧の調整や睡眠の記録が行われます。1カ月に1回、睡眠クリニックの診察時にこのSDカードを持参し、睡眠や無呼吸の状態をチェックします。

 最初は、顔を覆うマスクが気になってなかなか寝られないうえ、自然と口が開いてしまうことから、頭から下顎を紐で固定しました。今はシンプルで、口が開かないように上下唇にテープ(安眠テープ)を貼ってから、シーパップを使っています。それでも、朝起きるまでの間にマスクが外れていることもあります。

 もう10年にもなりますが、シーパップをつけることにより、心も安心して眠れる気がしています。しっかりと眠ることは、昼間の眠気や疲労感がなくなり、健康には大切なことだと思っています。

 シーパップは、専用ケース・バッグに入りますので、旅行する時は持参も可能です。それでも、荷物がひとつ増えることになるので、1~2泊の時は持参していません。

 睡眠クリニックの外来に来ている患者さんを見ると、睡眠時無呼吸症候群は必ずしも太った方ばかりではないようです。

 イビキの原因は、多くの場合、気道が狭くなること、つまり気道が炎症で腫れた時や、気道の筋力が弱くなることで起こるといわれています。また、普段からイビキをかく方に食道がんが多いという報告もあります。

 イビキの症状を指摘されたことがある方は、一度、睡眠クリニックか耳鼻科、消化器科の診察を受けた方がいいと思います。寝る時の体位、枕の位置などで解決される方もおられるようです。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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