悪玉コレステロールが高い人は認知症になりやすくなる…更年期の女性は要注意

運動も効的
運動も効的

 LDL(悪玉)コレステロール値が高い人は将来の認知症リスクが高い──。こんな筑波大の研究報告(2021年)がある。健診でLDLが高いと指摘されている人はもちろん、とくに女性は更年期にLDLの値が上昇しやすいので注意が必要だ。愛知医科大学産婦人科学講座主任教授の若槻明彦氏に聞いた。

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 コレステロールには、HDL(善玉)コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールがある。食生活が乱れて脂質や糖質を取りすぎるとそのバランスが崩れ、LDLが血管内に蓄積されて血管壁にプラークがつくられる。そうなると、血管が狭くなったり硬くなって動脈硬化を引き起こし、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を発症させるリスクが高くなる。

 筑波大の研究では、日英の医師や研究者らが約180万人を対象に最大23年間追跡調査したデータを解析したところ、LDLの値が高いとアルツハイマー型認知症の発症リスクが上昇していたことがわかった。中でも、中年期(40~64歳)のLDLの高値が、将来の認知症発症リスクに大きく影響を及ぼす可能性が高いという。

「アルツハイマー型認知症はアミロイドβという神経細胞の老廃物が脳の海馬に蓄積されて発症します。LDLと認知症との関連性についてはっきりとしたことはわかっていませんが、LDLが高いと、酵素に影響してアミロイドβが蓄積するとの考えがあります」

 心血管や脳血管の病気はもちろん、認知症を予防するためにもLDLの値が高い人は改善に努めたい。とりわけ、更年期の女性はLDLが高くなるため、注意したほうがいい。

「女性ホルモンのひとつのエストロゲンは、女性らしい丸みを帯びた体を形成したり、子宮内膜を厚くして妊娠に備えるほかに、LDLの生成を抑えHDLを増やす働きがあります。しかし、閉経が近づくにつれてエストロゲンの分泌量は急激に減少するので、LDLが上昇するのです」

 実際、閉経後の約半数近くは「高コレステロール血症」の状態だという。先ほど触れた筑波大の研究でリスクが高いとされている中年期は、更年期と重なる。また、認知症は男性と比較して女性は2倍多い点からも、日頃から対策を講じたい。

■週3回の運動から始める

 コレステロール値を改善するには、家族性高コレステロール血症の人、心筋梗塞の既往歴がある人はコレステロール降下薬「スタチン」を服用する。一方、家族性ではなく既往歴もない人は、まずは生活習慣の改善から始める。

「喫煙は、HDLを減らしてLDLを増やす働きがあるので禁煙は必須です。またアルコールの過度な摂取を控え、1日25グラム以下にとどめることが推奨されています。目安は500ミリリットルの缶ビール1本、日本酒1合、ワインであればグラス2杯程度です」

 食事内容も意識したい。卵類や肉の脂身、動物性の脂(牛脂やラード、バターなど)、加工肉、乳類、臓物類の過剰摂取を控え、野菜や穀物、ナッツ類、大豆、海藻、きのこ、果物、低脂肪乳製品の積極的な摂取を心がけるといい。

「運動も効果的です。ウオーキングや速足、水泳、サイクリングなどを『ややきつい』と感じる程度で1日30分、最低週3回は行うといいでしょう。それ以外にも、日頃からこまめに歩き、座ったままの時間を減らすことを意識してください」

 スクワットや腕立て伏せといった同じ動作を繰り返し、筋肉に抵抗を与える「レジスタンス運動」も、LDLの値の改善に効果が高いとされている。1回10~15回を反復し、1~2分休憩を挟む×1~3セットを、週2~3回の頻度で無理しない程度に行うといい。

 更年期の女性では、「ホルモン補充療法(HRT)」もLDLを安定させるという。

「更年期の症状で日常生活に支障を来している女性はHRTを受けられます。LDLの生成を抑えてHDLを増やすエストロゲンを補充するので、LDLの値の改善にも効果的です。HRTの投与方法を考慮することで重大な副作用である乳がんのリスクを軽減できることも近年の研究で明らかになっているので、一度婦人科で医師に相談してみてください」

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