ネガティブなニュースを見ていると、不快な気分になるという人は多いと思います。実際、感情は伝染するといわれ、直接目に飛び込んでくるような映像の場合、その感染力はとても高いといわれています。
では、テレビのニュースではなく、SNSの場合はどうかというと、やはりネガティブな情報や感情は伝染することが分かっています。その好例が、フェイスブックのニュースフィードに表示される投稿の感情が、ユーザー投稿の感情にどのように影響するかを調べる検証(2013年)です。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校などとともに研究を主導したクレイマーは、フェイスブックのデータサイエンティストとして勤務する“中の人”で、この検証のためになんと約70万人のユーザーのニュースフィードを解析したというから驚きです。
クレイマーらは、フェイスブックのアルゴリズムを操作して、ポジティブな言葉を含む投稿の表示を減らした場合、ユーザーの投稿にネガティブな言葉が増えるか? そして、その逆は起こりうるかと調べました。
その結果、前者のケースでは、ネガティブな言葉が含まれる機会が増え、後者ではポジティブな言葉が含まれる機会が増えると分かったそうです。SNS上でも分かりやすく感情が伝染することが示唆されたのです。
クレイマーは、ニュースフィードに表示される友人や知人のネガティブ/ポジティブなニュースを目にすることは、知らず知らずのうちに他者の感情を“盗聴”しているような効果をもたらすと指摘しています。盗聴とは言い得て妙でしょう。意図していなくても頭の中に入ってきてしまい、耳を傾けてしまうように影響されている──。オンライン上のメッセージは、私たちの感情体験に影響を与え、オフラインのさまざまな行動に影響を与える可能性があるのです。
現在、X(旧ツイッター)をはじめ、SNSやネット上にはネガティブな言葉がたくさんあふれています。「たかがSNS」と侮ってはいけません。ネガティブな書き込みに触れれば触れるほど、自らの感情や行動に悪影響を与える可能性があるわけですから、必要以上に目にしないことが大切です。
もし、あなたが偶然そうした書き込みや言葉に触れてしまった場合は、「ネガティブなニュースは自分とは関係ないと思うだけで暗いニュースに影響されない」という、ニューヨーク大学のチャングらの実験結果(21年)を参考にするといいでしょう。
この実験では、認知制御課題に取り組んだ被験者たちの「海馬」の活動が活発になることが分かりました。海馬とは、記憶を担う脳の器官ですが、仮に暗いニュースを見たとしても、「私には関係ない」と思うことで、記憶が都合よく自分にとって不要と感じる──すなわち、ネガティブな情報に影響されなくなることが分かったというのです。
不快な気持ちになる前に、「自分には関係ない」と割り切ることを覚えておいてください。
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