今年の夏は記録的な猛暑でした。連日、猛暑日を記録していた頃には、熱中症の高齢者がたくさん救急搬送されたというニュースをよく目にしました。老若男女、誰でも熱中症になるリスクはありますが、特に高齢者は熱中症になりやすいです。なぜなのでしょう?
高齢者が熱中症になりやすい理由としてよく報道などで取り上げられるものに、「エアコンをあまり使わない」というものがあります。これは加齢とともに暑さを感じにくくなるためで、救急隊が到着したときの室内温度が40度を超えていたなんて話もよく耳にします。そのため、「適切にエアコンを使うようにしましょう」といったアナウンスもされています。
しかし、じつはもっと大きな原因があります。それが「体組成(体の構成成分)の変化」です。加齢とともに体組成は変わっていき、骨や筋肉といった固形分は減り、体脂肪率は増えます。そして、細胞内の水分量が減ります。
細胞内の水は、体が脱水に陥った際の予備タンクのような役割も持っています。脱水とは体から水分が失われた状態を意味しますが、ある程度までは細胞内から水分が供給されるためあまり大きな問題になりません。ところが、高齢者は細胞内=予備タンク内の水分量が減っているため、すぐに水分が供給できなくなってしまい、容易に脱水が重篤化します。つまり、熱中症になりやすいということです。
ですので、高齢者は喉が渇いていなくても、こまめに水分を補給して念入りに脱水を予防しなければなりません。ただ、水分をとることで特に夜間、トイレに起きる頻度が高まることから、高齢者は夕方から夜にかけて水分を取りたがらない傾向があります。しかし、人間は寝ているときにもたくさんの水分を失っているため、やはり水分はしっかり摂取する必要があるのです。ポイントは1回にたくさんの水分を摂取するのではなく、少量をこまめに摂取することです。
ただ、単に水だけを摂取してもダメで、場合によっては一緒に塩分を摂取したほうが良いケースもあります。体から水分が失われているとき、一緒に塩分が失われているからです。基本的に体から水分だけが失われるということはありません。 水分と塩分を一緒に摂取するのにはもうひとつ理由があります。塩分が水分の吸収を促してくれることで、効率的に水分補給ができるためです。
それでも熱中症のような症状が認められる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。クスリ(ここでは点滴)を投与することで直接血管内に水分と塩分を補給できます。
冬であっても、熱中症は起こります。空気が乾燥しているうえ、暖房器具を使用する機会が多くなるからです。熱中症は重度になると死に至るリスクもあります。適切な水分補給と無理をしないということを心にとどめておきましょう。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方