高血圧専門医が教える「絶対に失敗しない減塩法」我慢するのはたった1週間

たった1週間のガマンで薄口嗜好へ変化する
たった1週間のガマンで薄口嗜好へ変化する

 健康寿命を延ばす上で、減塩は避けて通れない。高血圧の人はもちろん、血圧が正常範囲の人も、塩分の取りすぎは動脈硬化、ひいては脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めるからだ。

 一方で、日々の減塩にうんざりしている人、何度やっても失敗してしまう人もいるだろう。その場合、日本歯科大学内科客員教授、聖光ケ丘病院顧問の渡辺尚彦医師(高血圧専門医)が患者に勧めている「反復1週間減塩法」を試してみてはどうか。

 渡辺医師がかつて“普通の減塩法”を患者に勧めていた時、「これを長く続けるのはかなり困難」と感じていた。

「日本高血圧学会が推奨する1日の塩分摂取量は6グラム未満。これまで1日10グラムや14グラムで生活をしていた人にとって、1日塩分6グラム未満の生活は相当つらい。実際、挫折する患者さんが珍しくありませんでした。医師や管理栄養士もそれはわかっているが、確実に減塩に成功する方法を持ち合わせていませんでした」

 ある時、中華料理店を経営する患者から、こんなことを言われた。

「店の営業時間中、ずっと料理の味を見ているので、店を閉める頃には塩味がわからなくなる」

 渡辺医師はピンときたという。

「濃い塩味に慣れて味がわからなくなるのなら、その逆もいけるのではないか、と。考えついたのが、1週間だけ徹底的に減塩し、その後は普通の生活に戻る減塩法です。減塩期間中は、1日6グラム未満の塩分量にする。外食を1回でもしたらアウトで、加工食品や塩分を含む調味料は一切なし。つらい1週間ですが、言い換えれば1週間だけでいい。過ぎれば何を食べても構いません」

■「短期間の猛勉強」と同じ効果

 学生時代、テスト前に徹夜状態で猛勉強した経験はないか。渡辺医師の「反復1週間減塩法」は、それと似ている。

「毎日猛勉強は無理でも、テスト前の短い期間ならやり遂げられる。それを繰り返すことで、学力がついてくる。反復1週間減塩法を毎月実践し、薄味嗜好へと変えていくのです」

 1週間の減塩期間中は、「蓄尿検査」を実施。患者の尿をすべて採取して分析し、食生活の実態を把握する。「塩分摂取量1日6グラム未満」が実践できていない日があれば、原因を突き止める。「見える化」で、患者自身も何をすれば塩分量が多くなり、何をすれば少なくなるかがわかる。

「限りなくゼロに近い塩分量の食生活を送っていると、わずか1週間であっても、元の食生活に戻った時、これまで当たり前のように食べていた料理をしょっぱく感じます。『反復1週間減塩法』を経験した患者さんは、皆そう言います。ただ、最初のうちはすぐに元の味付けに戻ってしまう。それでいいのです。この減塩法を何度も繰り返していると、確実に少ない塩分量の食事で満足できる体に変わります」

 渡辺医師の外来に通っていない人は「蓄尿検査」で塩分摂取量を確認できないわけだが、それを除けば、「反復1週間減塩法」はだれにでも行える方法だ。

「塩分を含む調味料を一切使わないなんて、どうすればいいの?」と思った人もいるかもしれない。塩、醤油、ソース、ポン酢、マヨネーズ、味噌……などを使う代わりに、カラシ、唐辛子、こしょう、わさび、山椒、生姜、ニンニク、酢、レモン汁、ごま油、オリーブオイルなど、スパイスや薬味、酸味、香り高い油を使う。それらで物足りなさを打ち消すのだ。やってみると「なるほど」と思うはず。

 ちなみに記者は、普段から醤油やソースなどほぼ使わない。豆腐には鰹節とおろし生姜があれば十分だし、納豆もオリーブオイル、七味、海苔、ゴマでおいしくいただいている。

 お好み焼きは七味、青のり、鰹節で大満足。一方、回転寿司屋で食べると、醤油を使わずとも、食後、喉が渇いて仕方ない。ここまで体が変貌すれば、減塩に対し怖いものなしだ。

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