高齢の親の介護をどうするべきか、日本と同じように急激に高齢化するアメリカでも切実な問題です。そこで浮上してきたのは、介護する家族にも報酬を与えようという考え方です。
アメリカ人の介護への考え方はわりとはっきりしています。子供が無理して親の介護をするよりも、老人ホームなどでプロの手を借りた方がいい、というのは親子で共通しています。
しかし問題は、経済的にそれができない場合です。アメリカには公的な老人医療保険(メディケア)はありますが、日本のような介護保険制度はありません。介護施設はある程度の富裕層向けと、低所得者向けのものに限られ、中間層が入るのは困難です。
また在宅ケアの場合、日本のように手ごろな値段でヘルパーさんを頼むのは難しく、そうなるとやはり家族が中心となって介護せざるを得ないことになります。
50歳以上のアメリカ人の54%が、65歳以上の家族の世話をしています。この労働を金額に換算すると6000億ドルというものすごい数字になります。
しかし94%の介護者は、何の報酬も受け取っていません。場合によっては自分の仕事や生活を犠牲にして、親の介護をしなければならない。これを変えようという動きが少しずつ始まっています。
例えば、介護が必要な親が低所得者の場合、低所得者向け保険(メディケイド)が適応されれば、家族の1人を「介護者」として指定できます。介護者はその労働の対価を受け取ることができます。制度の内容や金額は州によって異なりますが、現在アメリカ50州全てで実施されています。
また高齢者保険(メディケア)にも改革の動きがあります。特に認知症を患う高齢者ケアと、介護者への教育と支援、一時的な介護代行などを統合するプログラムが計画されています。
こうした動きはまだまだ限定的なものですが、少しでも介護者の負担を減らすための方策を、多くのアメリカ人は待ち望んでいます。
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