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腹痛の原因は「腹の虫」? 戦国時代の医学書にも登場

寒暖差の疲れからお腹が痛くなる方も
寒暖差の疲れからお腹が痛くなる方も

 朝晩の気温が下がる季節になり、急な冷え込みや寒暖差の疲れからお腹が痛くなる方もいるかと思います。でもその痛み、もしかしたらお腹の中の「腹の虫」が原因かもしれません。

 お腹の中には虫がいて、その虫が悪さをすることで病気にかかっている。昔はそんなふうに考えられていました。

 そのため「腹の虫がおさまらない」「腹の虫が鳴る」「虫の居所が悪い」「疳の虫」など、体の状態を表現するのに虫という言葉を使ったものがたくさんあります。

 人の体内に潜んで、病気を引き起こすと考えられていたこの虫は、現在は九州国立博物館に所蔵されている戦国時代の医学書「針聞書」に描かれているものが有名です。

 このおよそ450年前の同書に登場する虫たちは、みなさんが想像する昆虫のような虫とは違い、馬や牛、または岩が擬人化したような姿や毛むくじゃらといった想像上の生き物たちです。

 現代でいうところのゆるキャラのようにコミカルに描かれている虫たちは一見愛らしくも感じます。

 種類もさまざまで、その名前も「肝積」「肺虫」「脾臓の虫」といった臓腑の名前が付いたものから、ぎっくり腰を引き起こす虫とされる「腰抜けの虫」、また「肝虫」や「蟯虫」といった現代でも馴染みのある名前のものまであります。

 肝虫(疳の虫)は今でいう子どもの夜泣きやかんしゃくなどに当たりますが、虫が原因ですから虫封じをして撃退します。地域によっては、現在でも土用の期間に、疳の虫封じのご祈祷を受けることができるお寺もあります。鍼灸の世界では子どもの疳の虫を退治するには小児鍼を使います。

 いずれにしても腹の虫は、コミカルなフォルムでも暴れだすと厄介なもの。腹痛やぎっくり腰などの体の不調やイライラしたり落ち込んだりの気分の浮き沈みは自己管理の問題だけではなく、ひょっとしてお腹の中の虫の仕業かもしれません。

 大人の虫退治にも鍼灸治療は有効です。もし疲れが出たときはぜひ一度、お近くの鍼灸治療院へ虫退治にいらしてはいかがでしょうか。

▽柳知佳 日本医学柔整鍼灸専門学校教員。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師。

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