自分の感情についての解釈を変えることで、マイナス感情を軽減する「リアプレイザル」という方法があります。
リアプレイザルは、英語で書くと「re=再度」「appraisal=評価」。いま感じている感情を再評価し、新たな意味づけをする「認知的再評価」を意味します。感情を再評価することで、悪い解釈を良い解釈に変えてしまおうというわけです。
リアプレイザルは、嫌な体験をポジティブに捉え直すことで、脳の扁桃体の活動が低下することも示唆されています。ハーバード大学のブルックスは、300人の被験者を対象に、「採点付きカラオケ」「2分以上の人前でのスピーチ」「数学のテスト」といったテストをするという実験(2013年)を行っています。その際、次の①~⑤を声に出してからテストをするグループに分けたそうです。
①私は不安だ②私はワクワクしている③私は落ち着いている④私は怒っている⑤私は悲しい──。
すると、②の「私はワクワクしている」と言ったグループは、カラオケでは正確性が、スピーチでは説得力や能力、自信、持続性などの評価が上がり、数学のテストでは一番の好成績を残しました。自分のストレス反応(緊張)を「楽しくなってきた」とポジティブに解釈したことで、17~22%ほど成績が良くなることが判明。緊張している人にとってリアプレイザルが、有効的であることが示されたというわけです。
リアプレイザルを行う際は、まず自分が感じている感情を認識するようにしてください。たとえば、大きな会議やプレゼンが控えているとしましょう。おそらく不安でストレスを感じているはず。ですから、まずはその不安をしっかりと認識すること。
次に、その感情(不安)が、本当にそのままの意味を持っているのか、再度、考えてみます。確かに会議やプレゼンは不安かもしれません。しかし、「きちんとした説明ができれば自分の評価が上がるのではないか?」などの再評価で、新たな視点が生まれます。
そして、その再評価した結果をもとに、感情に新たな意味づけをしてください。「自分の評価が上がるかもしれない」と考えられたなら、「だったら、どうすればパフォーマンスの高い発言やプレゼンができるだろう?」と捉え直せます。その視点を突き詰めていくことで、不安はポジティブなものへと変わっていくのです。
実際に、リプレイザルは、現代のスポーツサイエンス界でも注目されており、アスリートの不安・緊張対策に有効であるとされているほどです。不安から起こる生理現象も、興奮によって起こる生理現象も、汗をかいたり、体が震えたりと同じようなものです。脳としては不安も興奮も区別できていないので、その生理現象に対して、脳にどんな解釈を与えるかが重要になってきます。不安を感じたら、「今、私はワクワクしているんだ」と声に出して言い聞かせる。それだけで見えてくる世界が変わってくるはずです。
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