上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「孤独」が心臓病のリスクをアップさせるのはどうしてなのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

「孤独」は心臓病の発症リスクを大きく上昇させる──。以前から複数の研究で明らかになっている結果が、今年6月、米国であらためて報告されました。

 米厚生省が提出した「私たちの流行病:孤独の蔓延と孤立」という報告書によると、孤独=社会とのつながりの欠如は、心臓病のリスクを29%高めるといいます。ほかにも脳卒中のリスクが32%、高齢者の認知症のリスクは50%高まり、早死にする可能性も60%も高くなると記されています。

 なぜ、孤独は心臓病の発症リスクをアップさせるのか、はっきりした理由はわかっていませんが、「ストレス」が大きく関係していると考えられています。われわれが孤独を感じているとき、脳には大きなストレス=精神的苦痛がかかることがわかっています。ストレスを受けると交感神経が優位になり、神経伝達物質のアドレナリンや、ストレスホルモンのコルチゾールが大量に分泌されます。アドレナリンは心拍数を増加させたり、血流を増やして血管を収縮させる作用があり、血圧が上昇します。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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